シャンソン歌手で作家の戸川昌子(とがわ・まさこ)さんが、26日午前5時47分、胃がんで死去した。85歳だった。

 東京都出身。商社の英文タイピストとして働くかたわら、「銀巴里(ぎんぱり)」などのシャンソン喫茶に出演。楽屋などで書いた推理小説「大いなる幻影」で1962年に江戸川乱歩賞を受賞した。続く「猟人日記」は64年に直木賞の候補になり、映画化され自身も俳優として出演して話題を呼んだ。

 67年に伝説的なサロン「青い部屋」を東京都内に開店し、「銀巴里」の流れをくむシャンソンのライブを催した。川端康成や三島由紀夫、寺山修司、筒井康隆ら文化人が多数訪れ、2010年に閉店するまでサブカルチャーの発信地として若者にも親しまれた。今年7月に54回を迎えるシャンソンの祭典「パリ祭」を石井好子らと盛り上げるなど、存在感のある歌声で日本シャンソン界の中心として活躍した。

 息子の歌手NEROさんによると、5年前に末期がんの宣告を受け、闘病していた。今年3月に入院する前日まで、痛みをおして東京・渋谷のライブハウスのステージに立っていたという。