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 喫茶店や居酒屋での勉強会はクイズから始まる。「国民は憲法を守らないといけない。○か×か?」。正解は×――。

 「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、憲法を楽しく学ぶ催しを全国各地で続け、5月3日を前に「憲法カフェへようこそ」を出版した。なぜ×が正解なのか、新著に説明がある。

 法律は国民が守らなければならないが、憲法は違う。憲法は、国民が首相や大臣、国会議員などの為政者に守らせる約束事。作用する向きが正反対なのだ。

 憲法には政治権力がしていいこと、いけないことが書いてある。権力を憲法で縛り、暴走を防ぎ、国民の基本的人権を守る。こうした「立憲主義」の思想をもっと知ってほしい。若手弁護士の会の共同代表を務める黒澤いつきさんらは、そんな思いで活動を続ける。

非立憲的な執政ぶり

 憲法が公布されて今年11月3日で70年。歳月は重ねたが、立憲主義が本来の機能を果たしているとは到底言えない現状である。「非立憲」的と形容するしかない安倍政権の執政ぶりが、憲法の掲げる「人類普遍の原理」を傷つけている。

 憲法の縛りを何とか解き放ちたい。この点で、政権の姿勢は一貫してきた。

 発足直後から憲法96条の改憲要件を緩めようと模索し、批判を浴びて引っ込めた。普通の法律改正より厳格な手続きが必要なのは、時の権力を拘束する立憲主義からすれば当然だろう。

 安保法制では強引さが際立った。①9条の下では集団的自衛権は行使できない②この解釈は時の政権が自由に変更できる性質のものでない③行使を認めるには条文を改正するほかない。こうして長年にわたり三重に施されてきた錠を、安倍政権は一挙に解いた。

 憲法にもとづく臨時国会召集の要求を拒む。一票の格差是正で最高裁の判断に従うのを渋る。言論の自由や批判の自由を軽んじる。「権力分立」も「人権保障」も、およそ憲法の縛りというものに頓着がない。

 そのような政権が、憲法に緊急事態条項を書き込むことに関心を寄せている。自民党の改憲草案によれば、内閣への権限の集中と、国民の人権の制限がセットである。縛りからの歯止めなき解放に至らないか、極めて危うい。

民主主義に潜む危険

 衆院選でも参院選でも勝利し、国民に信任されたではないか。首相はそう自負しているのかも知れない。正当に多数を握ったのだから何でもできるという発想だとすれば、それこそ非立憲的というほかない。

 民主主義は優れた仕組みだが、多数派の専横に陥る危険も潜む。選挙が独裁者を生むこともある。立憲主義は民主主義にも疑いの目を向け、「数の論理」の横行や少数派の切り捨てに待ったをかける。その役割を忘れるわけにはいかない。

 首相はこの夏の参院選で改憲を訴えるという。立憲主義をさらに傷つけることを許すのか。立憲主義を取り戻し、立て直すのか。主権者である私たち国民が、答えを出すしかない。

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