[PR]

 「早く死ね、と言われているような気がする」。青森市のアパートで1人で暮らす斉藤ナミさん(88)は、唯一の収入である国民年金の受給額が目減りした近年の動きをそう捉える。

 受給額は65歳以降、月5万円台で推移。昨年度は5万9千円だった。食材はスーパーで安い物を選び、衣服は買わずに友人からのもらい物や亡くなった姉の形見を着る。ただ、3万8千円の家賃や光熱費を合わせると、年金だけでは足りない。給付額が減り、貯金を切り崩すペースが加速しているという。

 市内で生まれ育ち、戦後、道路舗装や側溝工事などの日雇い労働をした。空いた日や夜もリヤカーでアイス売りをしたり宵宮の出店を手伝ったり。「寝る時間も惜しんで働いた」

 33歳だった1961年に国民年金制度が始まったが保険料を支払う余裕はなく、納付免除を申請。10年後に納付を始めた。一緒に日雇い労働をした夫は52歳で病死。斉藤さんは65歳から公共施設の清掃作業をしたが、70歳になると働き口がなくなった。

 「老後はきちんとしなさい」という親の言いつけを守り、若い頃から交際費はほとんど使わなかったという。だが、今年中に貯金が尽きる見込みだ。その後は不足分を生活保護で補うしかないと考えている。「おいしいものを食べたい、旅行したい、と思う度に惨めな気分になる。長生きするのはこんなに大変なことなのでしょうか」

国民年金、23年連続で全国最下位

 公的年金の受給額は納付期間や受給開始時期などで変わる。青森県内の受給額は全国でも最低レベルだ。

 厚生労働省のまとめによると、青森県の国民年金の平均月額は2014年度末時点で5万978円。10年間で3615円増えたが、23年連続で全国最下位だ。全国最高の富山県より7120円少ない。

 一方、厚生年金(基礎年金を含む)は12万4151円で5年連続45位。10年間で2万1041円減り、最高の神奈川県より4万4434円少ない。両年金の合計受給者数のうち厚生年金の受給者の割合が25・8%と、沖縄県(24・0%)に次いで低いのも特徴だ。

 国は近年、年金の実質的な減額を進めている。少子高齢化で保険料を払う人が減る一方、年金をもらう人が増えており、年金財政が立ちゆかなくなる懸念があるためだ。

 年金は前年度の物価の変動に合わせて増減するが、政府は00~02年度、「個人消費が回復していない」などとして物価が下落したのに特例で据え置いた。そのまま本来より高い支給水準(特例水準)が続いたが、13年10月~15年4月にその分の2・5%を引き下げた。15年4月には年金額の伸びを物価の上昇分より小さく抑える「マクロ経済スライド」を初めて実施した。

最低保障年金制度実現向け動く

 これを受け、月8万円の最低保障年金制度の実現などを訴えている全日本年金者組合(東京)は昨年2月以降、特例水準解消の取り消しを国に求める裁判を起こすことを全国で呼びかけた。同組合によると、14日時点で41都道府県の地裁で提訴された。

 県内では昨年6月15日、青森市や弘前市、八戸市などの受給者60人が青森地裁に提訴。原告数は東北6県では最多となった。

 同組合県本部は04年から毎月、青森市中心部で年金減額反対などを訴える街頭演説を実施し、昨年から14日までに賛同する署名を1万5303筆集めた。1月には約20団体が入る「青森年金裁判を支援する会」が結成された。原告団長で同組合県本部の千代谷邦弘執行委員長は「生活が苦しいのは当たり前という現行制度への怒りの声を感じる。あるべき年金制度とは何か、裁判で世に訴えたい」と語る。

<アピタル:ニュース・フォーカス・特集>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/