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 病気治療の前に凍結保存していた精子を無断で処分されたとして、大阪府池田市に住む夫婦が2日、大阪市立総合医療センター(大阪市都島区)を運営する大阪市民病院機構と当時の担当医を相手取り、計1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴する。夫婦は「子どもを得られなくなった苦しみを知ってほしい」と訴えている。

 原告は会社員北村哲也さん(31)と妻(29)。訴状などによると、北村さんは血液が正常につくれない骨髄異形成症候群と診断され、2003年11月に大阪市立総合医療センターに入院した。治療で精子細胞が壊れる恐れがあったため、センターは翌月から液体窒素で精子を凍結させ、無償で保存を始めた。

 12年4月に体外受精の担当医が別の病院に異動することなどから、センターは1年後をめどに凍結精子の移管や廃棄を検討。当時、交際中だった夫婦は同年12月に別の医師と面会し、「結婚するまで待ってほしい」と依頼。訴状では「勝手に廃棄することはない」と回答があったとしている。

 ところが14年9月ごろ、センターは元担当医の意見も聞いて液体窒素の補充を打ち切り、保存中の精子は機能を失った。事前に北村さんへの連絡はなかった。

 北村さんは結婚3カ月後の15年4月、精子を引き取るためセンターに問い合わせ、凍結保存が継続されていないことを知った。訴状では、管理体制の甘さが担当者間の連絡ミスを生み、「了承を得た」と思い込んだと主張している。

 市民病院機構は問題発覚時の取材で、「説明不足の点はあった」としながらも「面会時に保管期限(13年3月末)を伝えていた」と反論していた。1日の取材に対しては「現段階でコメントは差し控えたい」としている。(阿部峻介)