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 指は日常生活だけでなく、仕事や芸術活動にとって重要な役割を果たす部分です。その指を電動ノコギリや裁断機などを扱っている最中に誤って切断してしまう事故が時々起こります。今回は、指の切断の治療について説明します。

 切断は、その程度によって二つに分類されます。指が完全にもげてしまった状態を「完全切断」、皮膚や腱(けん)(スジ)でかろうじてつながっている状態を「不全(ふぜん)切断」と言います。

 治療はほぼ同じですが、とれた指を氷水で冷却することができる完全切断が指の傷みの進行を遅らせることが可能なのに対し、指が一部でつながっている不全切断は冷却が難しく、体温や外気温によって傷みが進みやすくなります。ただし、不全切断は静脈がつながっている可能性があるので、血液がたまって流れが悪くなる「うっ血」になりにくく、術後のトラブルを減らすことができます。

 切断指をできるだけ元の通りにつなぐ治療を「再接着」と言います。全ての切断指が再接着できるわけではありません。切断部分が鋭利であり、土壌などの汚染が少ない方が、再接着が可能となります。

 再接着が困難なのは、①切断指が圧迫されて切断された「圧挫創(あつざそう)」②高熱の機械に巻き込まれたり挟まれたりすることで起こる「ヒートプレス損傷」③指を挟まれた状態で引き抜こうとして、神経や腱が断裂部よりも体幹に近い方でちぎれてひも状に抜け、神経や腱の縫合が困難な場合④切断後冷却されずに時間が経過した場合⑤全身の合併症がある場合――です。また、喫煙者や高血圧症、高齢者は血管が硬くてもろくなっているため、血管の吻合(ふんごう)(中が空洞の管をつなげること)が難しいことがあります。

 再接着のためには切断後の冷却方法が重要です。

 指を氷水に直接入れると、細胞が破壊され、再接着が困難となります。切断された指は、洗浄してからガーゼなどで余分な水分を取り、ポリ袋に入れて氷水で冷却します。正しく冷却された指は、8時間まで再接着可能となります。

 再接着術の手術は基本的に次のような手順で行います。

 ①骨をワイヤで強固に固定する

 ②指を曲げる屈筋腱(くっきんけん)と指を伸ばす伸筋腱(しんきんけん)を縫合する

 ③指神経を縫合する

 ④動脈・静脈を吻合する

 指は動脈の流れが悪いと、血液の供給が不足する阻血(そけつ)状態となります。また、動脈の吻合ができても静脈の流れが悪いと、うっ血状態となります。どちらの場合も指の壊死(えし)が起こります。そのため、術後はベッド上で安静にしてもらい、吻合した細い血管がつまらないように、血液をサラサラにする薬と血管が開く薬を使用する「抗凝固療法」を行います。術後約2週間の安静後、指の曲げ伸ばしや、指以外の手首・肘(ひじ)・肩などを動かすリハビリテーションを行います。

 指がくっつくかどうかは、ケガの部位や状態、全身の状態や、受傷からの時間など、さまざまな要因で決まります。早ければ早いほどくっつく可能性が高くなるため、救急車での早い病院受診が重要です。

<アピタル:弘前大学企画・骨と関節の病気 予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科整形外科学講座助教 上里涼子)