[PR]

第7章:6

 「最初はあんまり気にならなかったけど、2日目ぐらいから、だんだんきつくなってきたんです」

 川崎市でアパートの大家ら3人が刺殺された事件で裁判員を務めた米澤敏靖さん(27)は振り返る。

 公判は、2011年6月2日から横浜地方裁判所で始まった。当時大学4年生だった米澤さんは「1番」の裁判員。法壇の席は傍聴席から向かって一番左だった。

 被害者参加制度を利用して、被害者遺族が毎日数人、検察官の後ろに座っていた。遺族の席は、傍聴席と被告からは見えないようについたてで仕切られていた。彼らの姿が見えたのは、法壇の左端に座る自分と隣の「2番」裁判員の女性だけだった。

 きつくなったのは、遺族の様子がはっきりと見えることだった。

 法廷では、調書の朗読や尋問で、事件に至るまでの被告の男性(裁判当時59)の行動や思いなどが示されていった。

 被告の調書などによると、事件の前に、被告がドアの開閉音がうるさいと、隣に住む大家の弟の妻(当時68)に苦情を言うと、妻は「うるさいなら、出ていけばいい」などと答え、それに対して被告は「殺すしかないよね」などと言ったという。また、「アパートを追い出されたら住む所もなく、生活保護も切られて自分には死を意味する」「『出ていけば』と言われたことで、死への恐怖や3人への怒りが募った」などと被告が語っていたことも明らかにされた。

 証人尋問では、大家の弟夫妻の長女が証言台に立ち、事件の数週間前に「母から被告に『おまえらを殺すのは簡単だ』と脅されていると相談を受けた」などと語った。「怖い」と言い、ノイローゼ気味だった母親に警察への相談を勧めたが、母親はそれには消極的だった、などと振り返った。

 弁護側の証人として被告の親しい知人らが証言に立ったときのことだ。知人は、被告が飲んでも暴れたりせずにおとなしかったことや事件後に警察署で面会したときに「申し訳ないことをしてしまった」と話していたことなどを語った。

 どの場面だったかは覚えていないが、声が耳に飛び込んできた。

 「ふざけんな!」

 ついたてで仕切られた席に座っていた遺族がはき出した言葉だった。さらに、バーンと机をたたき、資料を丸めて、ついたてに投げつける音も響いた。

 その激しさにびっくり…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら