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第7章:9

 死刑か、それとも無期懲役か――。川崎市のアパートで大家ら3人が殺害された事件。裁判員を務めた米澤敏靖さん(27)らは、2011年6月10日の午後から土日を挟んで5日間の評議に入った。

 その日の午前の法廷で、検察側は「死刑」を求刑。弁護側は「無期懲役刑が相当」と主張した。

 評議はまずは事実確認から入った。法廷で出てきた証拠をひとつひとつ確認、凶器に見立てた紙でできている模造刃を使って、事件の状況を再現した。

 裁判員も補充裁判員も最初は積極的に話をしていた。わからないことがあれば、裁判官がわかりやすく説明してくれた。

 だが、後半の量刑を考える段階に入っていくと、裁判員の口はだんだんと重くなった。裁判官が、死刑は絞首刑であることや永山基準などを説明した。

 永山基準は、死刑を選択するときに考慮されてきた。4人を殺害した永山則夫・元死刑囚に対して最高裁が1983年の判決で示したもので、①犯行の罪質②動機③態様④被害者の数⑤遺族感情⑥社会的影響⑦犯人の年齢⑧前科⑨犯行後の情状―の9項目だ。

 当時大学4年生だった米澤さんは裁判員と補充裁判員の中で一番若かった。永山基準についてはほとんどが初めて聞く内容だった。総合的に判断するように、と裁判官には言われた。

 一方、無期懲役になれば30年は刑務所から出られないという説明もあった。弁護側は最終弁論で「59歳の被告は無期刑でも社会に出てくることはないだろう」と訴えていた。

 「弁護人の言う通り、被告の年齢を考えると、本当に無期でも社会には出てこないんだ」と思った。

 パソコンで量刑検索もした。裁判員がどんな条件で検索するかをリクエストし、「3人、刺殺」「近隣トラブル」などで引いた。完全に一致する判例はなかったが、被害者が3人だと死刑という結果が多かった。

 どう判断すべきか。

 米澤さんは悩んだ。犯行について被告の記憶はあいまいで、はっきりしないことが多い。でも、実際に3人が殺害されている。被害者遺族の処罰感情は極めて強い。59歳という被告にとっては無期でも死刑みたいなもので、社会には戻ってこない。一生償いながら生きてほしいという気持ちもある。いろいろな考えが、頭の中を駆け巡った。

 土日を除いて、連日、朝から夕…

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