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第7章:10

 「被告人を死刑に処する」

 2011年6月17日午後4時すぎ、横浜地方裁判所101号法廷に、裁判長の声が響いた。

 川崎市でアパートの大家ら3人が殺害された事件。裁判員裁判としては全国で6例目の死刑判決だった。

 判決は、大家の弟が立てるドアの開閉音で悪感情を募らせて犯行に及んだと判断、転居を申し込むなど被告なりの努力はあったが、大家の弟の行為は「殺されなければならないほど悪質とはいえない」とした。被告の生い立ちなどについても「克服するきっかけは何度もあった」と述べ、「死刑に処するのはやむを得ない」と結論づけた。

 死刑判決の場合は通常、主文は最後に言い渡されるが、この日は真っ先に読み上げられた。

 裁判員の米澤敏靖さん(27)はスーツに身を包んでいた。ずっと普段着だったが、重い判決を言い渡すことになる合議体の一員として、きちんとしていたかった。判決を聞きながら、被告の男性(当時59)、ついたてで遮蔽(しゃへい)された被害者遺族、傍聴席を見渡した。

 被告は終始下を向いていたので、表情は見て取れなかった。半袖短パン姿からのぞく腕と足の入れ墨にどうしても目が行った。ついたてに仕切られた席にいた被害者遺族はしきりに目元にハンカチを運び、廷内にはすすり泣く声が広がった。傍聴席は傍聴人で埋まっていた。記者とみられる人たちが多数いた。初日からずっと来ている傍聴人の顔もあった。

 「こんなに注目されていた事件だったんだ」。そんなことを思っていると、判決公判はあっという間に終わってしまった。

 評議室に戻ると、やりきった充実感に包まれた。守秘義務について、評議の内容は話さないようにと言われた。法律では、評議の経過や多数決の内容などは話してはいけないことになっているが、感想などは語ってもいい。しかし、そのときは、すべて話してはいけないのだと思った。カウンセリングなどの紹介もできるとの説明もあったが、「自分は使わないな」と思った。

 記者会見があると言われた。そのまま帰ろうとしたら、「一番若いんだから、出ろよ」。裁判中にいろいろ教えてくれた年配の補充裁判員に声をかけられた。

 「あー、じゃあ、出ます」

 裁判員3人と補充裁判員3人の…

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