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 地震などの災害時、トイレに行きづらい環境が続くとしたら――。自治体や家庭で備えができていないと、命に関わる事態に直面します。熊本の被災地に入ったNPO法人「日本トイレ研究所」(東京)の加藤篤代表理事に、課題を聞きました。

 地震発生から10日目に熊本市内で4カ所、益城町で3カ所の避難所のトイレを見て回りました。過去の災害時より改善した部分もありますが、「快適に使えるトイレがない」という根本的な問題は解決していませんでした。

 屋内のトイレは断水で使えなくなり、屋外の仮設トイレがメインでした。ただ、相変わらず和式がほとんど。段差もあり、お年寄りや体の不自由な人には特に向きません。しゃがむことができない人が、床が泥だらけの和式の便器の上に直接座って、用を足したという話も聞きました。

 また、ある避難所では、屋内のトイレは使用禁止で、体の不自由なお年寄りまでもが外のトイレに何とか歩いて行くという状況でした。

 確かに、断水時は水洗トイレは機能しませんが、トイレ空間はそのまま使えます。私たちは避難所の医師と相談して、多目的トイレ室に洋式の簡易トイレを置き、お年寄りなどが優先的に使えるトイレにしました。

 想像してみて下さい。安心して使えないトイレには、何度も足を運びたくありません。やがて水分を取ることを控えるようになります。それが一因となり、血栓ができて、エコノミークラス症候群(肺塞栓(そくせん)症など)を引き起こす可能性があります。今回も問題になりましたが、不十分なトイレ環境と無関係ではなかったと考えています。

 安心して使えるトイレを求めることは「ぜいたく」ではなく、命を守るため優先して取り組むべきことです。自治体には事前にどうトイレを確保し、運営するかという計画が必要です。個人でも携帯トイレ(便袋)を備蓄しましょう。ホームセンターなどで購入できます。(長谷川陽子)

国もようやく対策を本格化

 災害時のトイレの問題は、1995年の阪神大震災で顕在化した。その後も大災害のたびに、繰り返し重要性が指摘されてきた。国もようやく「生命にかかわる問題になりうる」として、自治体向けのガイドライン作りに着手。今春取りまとめた。

 内閣府が熊本地震の直後に公表したのは、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」。個数について、「災害の発生当初は避難者約50人あたり1基」などと目安を示し、自治体に対し計画的に準備するよう促した。国土交通省も3月、東日本大震災で一部の自治体で役立った「マンホールトイレ」のガイドラインを作った。

 経済産業省によると、熊本地震では、国が被災自治体の要請を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」で、携帯トイレ約19万個、簡易トイレ約8千個を送ったという。

 洋式の仮設トイレを普及させる取り組みも始まっている。仮設トイレの多くはレンタル商品で、建設現場向けに作られている。男性の多い現場では和式が好まれる傾向があり、リース会社の商品も和式が多いという。

 国交省は「建設現場のトイレが変われば、災害時のトイレも変わる」として、昨年度からモデル事業を始めた。国交省が発注する一部の工事現場で、洋式や、臭気対策などを施したトイレを試験的に導入し、費用や使い勝手などを調べている。

<アピタル:ニュース・フォーカス・特集>

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