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 聖マリアンナ医科大学(川崎市)の男性准教授(神経精神科)らが、統合失調症の患者を対象とした臨床研究を計画通りに実施していなかったとして、大学が研究を打ち切っていたことがわかった。承認済みの治療薬2種類で認知機能の改善度を比較する目的の研究で、患者に飲んでもらう薬を無作為に選んでいなかったという。

 大学によると、承認した計画では、この臨床研究は2009年から今年1月末までで、対象は初めて統合失調症を発症した16~40歳の患者。同大病院など2病院で参加に応じた40人を、2種類の治療薬のどちらかを飲むグループに無作為で分け、指定した薬を1年間飲むことになっていた。しかし、09~11年に参加した23人にはすべて一方の薬を割り当て、12年以降の17人にはもう一方の薬を選んでいたという。

 このため大学の倫理委員会が今年1月初旬、研究の打ち切りを決めた。一つの薬を先に選んだ理由について、研究代表者の准教授は「(最初の薬に関する)論文を学生に早く書かせるためだった」と説明しているという。大学は4月に調査委員会を立ち上げた。加藤智啓・医学部長は「原因を明らかにしたうえで再発防止に取り組む」と話す。

 准教授らは、最初の薬だけを使ったデータをもとに論文2本を12年と14年に医学誌に発表。昨年9月に作成された日本神経精神薬理学会の統合失調症薬物治療ガイドラインには、この最初の薬は初発の患者に対し「低用量で高い有効性と安全性を認めたという報告がある」と記載され、参照した文献にこの論文2本が示されている。准教授はガイドラインの作成にかかわっていた。

 学会の石郷岡純理事長は「薬の評価はこの論文だけでなく、広く研究を集めて総合的にしている。ガイドラインは作成時点では問題はなく、准教授から論文の紹介などもなかった」としている。

 聖マリアンナ医科大学病院では昨年、「精神保健指定医」資格の不正取得が発覚し、この准教授を含む計23人の医師が資格取り消しと業務停止1~2カ月の処分を受けた。調査委は23人が担当した臨床研究や論文に不正がないか調べている。(竹野内崇宏)