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 ピロリ菌は、人類の誕生と同時に人間の胃にすみついたと考えられています。イタリアで見つかった5300年前の氷漬けの中年男性のミイラ「アイスマン」の胃からもピロリ菌は発見されています。

 現代の日本人のピロリ菌感染率は年齢によって差があり、20歳代では10%と低いのですが、60歳以上の方の感染率は約60~70%と非常に高いことが知られています。なぜでしょう?

 ピロリ菌はとても特殊な菌で、ヒトの胃にしかすむことができません。胃の中のピロリ菌は、便や嘔吐(おうと)した物の中に混じって、体外に出て、それが他の人の口に入ることで、伝染します。この際、多くの場合、5歳以下の子どもに感染します。子どもの胃は胃酸が少なく、免疫も発達していないことから、ピロリ菌が簡単に胃にすみ着いてしまうと考えられています。

 つまり、ピロリ菌の感染は子どもの頃に起こるので、その時の衛生状況がとても大切です。具体的には、子どもの頃に井戸水を飲んでくみ取り式トイレを使うような生活の場合はピロリ菌感染率が高く、上下水道と水洗トイレが普及するにつれて感染率は低下することになります。そのため、日本の高齢者ではピロリ菌感染率が高く、若年者では低いのです。

 また興味深いことに、ピロリ菌に感染している日本の子どもを調べると、ほとんどの場合、両親のどちらかが感染しています。このことは、家族にピロリ菌感染者がいると、子どもに伝染してしまう可能性があるということです。

 ピロリ菌は一度感染すると、数十年にわたって人間の胃にすみ続け、その間、持続的に胃に炎症を起こし、慢性胃炎の原因となり、ついには胃潰瘍(かいよう)・十二指腸潰瘍や胃がんを起こします。

 自分のためだけでなく、愛する子どもさんやお孫さんにピロリ菌をうつさないためにも、ピロリ菌を調べましょう。

<アピタル:医の手帳・ピロリ菌>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/techou/(新潟大学医歯学総合病院 佐藤祐一准教授(光学医療診療部))