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 高齢化や核家族化と裏表で進む孤独死。本人が周囲にSOSを出さない場合など、支援の難しさも浮かぶ。ベストセラーとなった「下流老人」で、高齢者の孤立や貧困問題に迫った、NPO法人「ほっとプラス」(さいたま市)代表理事の藤田孝典さんに、孤立に陥らないための備えを聞いた。

 ――高齢者の孤立が問題化してきた背景とは。

 「かつては家族が高齢者を支える余裕があったが、今は家族機能が弱まり、支えきれなくなっている。共働きが増え、非正規雇用が広がり、若者の所得は下がる一方。親をみる余裕が現役世代にはないのに、社会保障はそれを支えきれていない」

 ――団塊の世代が高齢期を迎える中、今後さらに深刻化すると考えますか。

 「中間層や下層に対する介護サービスがきわめて弱い。今後、介護ニーズがさらに高まったときに、一家心中や介護殺人の事例は後を絶たなくなるのではないでしょうか。自炊能力が高くなく、家事労働に慣れていない男性介護者は特に深刻です。男性は現役のうちから、家事や炊事を配偶者に依存しないほうがいい」

 ――高齢者の貧困の問題を指摘した「下流老人」は大きな反響を呼びました。

 「高齢期になっても普通の暮らしができる、と思っている人は多いが、実際には高齢の一人暮らしや夫婦世帯が増え、病気や介護、子どもの出戻りなどちょっとしたきっかけで老後の不安につながります」

 ――社会保障制度の転換を訴えています。

 「今、老後は想像以上に長くなっている。公営住宅を拡充し、介護サービスを行政が責任を持って提供する形に転換していくべきです。地域ができる役割は、高齢者への声かけなど介護予防の部分。公的責任が不明確で財源の裏付けがないまま、地域で高齢者を支えようという『地域福祉』は失敗だと私は指摘しています」

 ――高齢期に孤立しないために、自分でできることとは。

 「身寄りがない人でも、支え合いが機能していれば、いざというときの支援につながる。周囲に助けを求める力を現役世代から身につけることが大事です。自分が安心して相談できる人間関係をなるべく多く、密につくっておくべきです」(聞き手・清宮涼

安らかな老後を迎えるために(藤田孝典氏への取材から)

・困ったときに気軽に相談できる人を身近につくる

・地域活動に参加するなど、地域とつながる

・生活保護をはじめ、社会保障制度を正しく知る

・金銭面や炊事について配偶者に依存しすぎない

・家族や友人との人間関係を大事にする

・長い高齢期を見据え、必要な預貯金を考える

ふじた・たかのり 1982年生まれ。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。「下流老人」に続き、3月に「貧困世代」を出版。

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