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片山杜秀(評論家)

 今月の文芸誌には共通テーマがあるようだ。ずばり“私の消滅”。誰が仕組んだわけでもあるまいに。

 津村記久子の「浮遊霊ブラジル」。ブラジル人の浮遊霊の話ではない。主人公は70代の日本人男性。人生初の海外旅行を目前に急逝する。幽霊になってみると案外不自由だ。生前の歩く速度で浮遊できるのみ。そこで外国人に取り憑(つ)いて海外渡航の夢を果たそうとする。でも憑依(ひょうい)するのも難しい。目的地はアイルランドなのに、なぜかブラジルへ。デタラメを楽しく読ませる。浅田次郎風のペーソスと桂文枝の創作落語風の滑稽味が両立する。でも寄る辺ない。風に吹かれるまま。主体性ゼロ。私であって私でない。浮遊霊の態度もだんだん投げやりに。それが黒い笑いを呼ぶ。

 崔実(チェシル)の「ジニのパ…

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