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モデル・タレント 佐藤栞里さん

 父がずっと野球をしていたので、私も幼い頃からテレビで高校野球を見ていました。夏休みに新潟県の祖父母の家に行くと、朝はワーという歓声や吹奏楽の応援が聞こえ、それで目が覚めていたくらい。みんなで甲子園の試合を見るのが当たり前で、いつの間にか高校野球が大好きになっていました。

 埼玉県の高校に入学してから、地方大会の観戦へ行き始めました。野球部のクラスメートは普段はひょうきんだったり、授業中に寝ていたりするのに、放課後は真剣なまなざしで練習しているんです。「彼らの雄姿を見届けたい!」という気持ちになりましたね。

 実は、野球部のマネジャーになりたかったんです。その頃にはもうモデルの仕事をしていたのでチームに迷惑をかけてはいけないと思って諦めました。でも、毎年、夏は球場に行って野球部を応援しました。みんなで誘い合って。仕事のない時は、ほぼ全試合行きました。

 最近は、父と一緒に地元の球場で高校野球を見ます。父に解説してもらいながら応援するので、この時ばかりは「お父さん、格好いいなあ」って思いますね。父にはいつも「今年も(観戦に)行くでしょ」と誘われます。「しょうがないなあ」って答えますけど、「一緒に行けてうれしい」って思ってくれていたら、私もうれしいな。

 スタンドは日差しが強いので、日焼け止めを塗ってタオルを頭にぐるぐる巻きます。座るのはいつも、応援団や保護者がいるすぐ隣の席。皆さんの熱さをできるだけ近くで感じたくて。応援団員が水をかけ合うのを見ると、ちょっとでも仲間に加わりたいし、「私にもかけて!」って思っています。

 初めて甲子園で観戦したのは、2014年の夏の準決勝でした。休みができたので父と訪れました。甲子園駅に着いた瞬間、「ああ、やっと来られたんだ。夢の場所に!」と、球場に入る前から「ううっ」と思いがこみあげてきちゃいました。

 甲子園で印象に残ったのは、試合で負けた球児たちがグラウンドの土を集める姿です。気付いたらフェンス際まで近づき、見ていました。妄想なんですけど、土は家族に見せるのかな、一生のお守りになるのかな、この経験は一生の糧になっていくんだろうな、なんて考えながら。

 高校野球の魅力は大どんでん返しがあることですね。九回裏から始まる物語。みんなの諦めない気持ちがあるからこそ、映画やドラマのようなストーリーが現実に起こる。諦めなければ何でもできるって思えます。

 試合を見ていて、グッとくるのは、ピンチで選手たちがマウンドに集まるときです。今、心が乱れているからこそ、みんなで頑張ろうって誓い合う瞬間。そのあと、雰囲気が変わってピンチを切り抜けることもある。あのひとときは素晴らしいなって思います。

 「もう絶対だめだ」と諦めてしまいそうな場面は、私の人生でもいっぱいありました。でも、高校野球で大逆転した試合があったことを思い出してみると、「まだいけるかも」という前向きな気持ちになれます。

 仕事をしていると、諦めないこと、続けることの大切さを感じます。本番で失敗したり、面白いことが言えなかったりすると、へこみます。でも、「今まで頑張ってきた。その過程がある。それを自信に、次につなげよう」と考えられるようになった。高校野球から学んだことで、いつも球児のみんなに励ましてもらっているんです。

 みんなの周りには、人生の財産が詰まっていると思います。目標に向かって頑張ってきたこと、積み上げてきた努力を分かち合える仲間、悔しい思い出……。挙げたらきりがないですね。その一つ一つを大切に持ち続けてほしいです。(構成・円山史)

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 さとう・しおり 1990年生まれ。埼玉県育ち。2001年、ファッション誌のオーディションでグランプリを獲得し、モデルとしてデビューした。「MORE」(集英社)など多くのファッション誌で活躍。日本テレビ系「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」では昨秋からサブMCを務める。8月11日公開のアニメ映画「ペット」の日本語吹き替え版で、初めて声優に挑戦している。