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 炭水化物を減らした麺やつくだ煮、和菓子、練り物……。難治性てんかんの治療法の一つである食事療法中でも楽しめる食品づくりに、静岡県西部の企業からなる「遠州食品加工業協同組合」が取り組んでいる。加盟企業の社員で、てんかんを患う男性の存在がきっかけになった。

 浜松地域の情報ポータルサイト「はまぞう」でのブログ執筆や、ブログ講師をしている大下剛史さん(35)は2007年に脳炎にかかった後、難治性てんかんと高次脳機能障害を発症した。現在、薬による治療などに加えて、発作を抑えるために炭水化物を制限する糖質制限食を1年ほど続けている。

 糖質制限を始めて発作が半減した大下さん。しかし、「食べられる材料が極端に少ない」と話す。同じ食材を食べ続けることが多く、スーパーに行くたびに「あと5品、食べられるものがあれば……」と考えるという。

 「はまぞう」を運営するインターネット関連会社「シーポイント」は遠州食品加工業協同組合に加盟し、情報発信を担っている。シーポイントの野沢浩樹社長の紹介で、組合加盟の製麺製造卸「杢屋食品」の杢屋彰一社長(52)が大下さんの食事制限について知った。そこで、ほかの加盟企業とともに食事療法向けの食品を開発しようと昨年から本格的に乗り出した。

 和洋菓子製造販売の「田町梅月」の富田直満社長(53)も糖質制限を体験してみたことがある。制限中に食べたかしわ餅の味は格別だった。「日頃がまんしているからこそ、食べたときの喜びを感じてほしい」と食事制限でも楽しめる菓子を考えている。

 ただし、食材同士を結びつけるでんぷんが使えないため、麺は長くつながらず、パンは膨らまない。乾燥こんにゃくの代用などで課題を克服する一方、各企業は大下さんや主治医で聖隷浜松病院(浜松市)の藤本礼尚・てんかんセンター副センター長に意見を聞きながら商品化に取り組んでいる。組合で開発した食材を組み合わせて、糖質制限をしながらも食べることを楽しめる弁当作りを目指す。

 今月から、難治性てんかんで食事療法が保険適用になったことも開発の追い風になっている。大下さんはブログ(http://tenkanjoho.hamazo.tv/別ウインドウで開きます)などで糖質制限の体験談も含めて情報発信を始めている。「てんかんを後ろ向きにとらえがちな患者さんが、前向きになれるきっかけを作りたい」と大下さんは話している。(杉本崇)

大下さんの食事例

・1月4日……朝食は卵、豆腐、チーズ。昼食はアナゴ、カキフライ。夕食はチーズ、鶏のから揚げ

※この日はカキフライが原因とみられる発作が起きる

・2月5日……朝食はクルミ。昼食はサバ、ホウレンソウ、卵。夕食は卵、カツオ刺し身、鶏のひき肉

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