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 「君考えても分るじゃないか、あれだけの財産があってあれだけの器量なら、どこへだって相応の家(うち)へ遣れるだろうじゃないか。寒月君だってえらいかも知れんが身分からいや――いや身分といっちゃ失礼かも知れない。――財産という点からいや、まあ、だれが見たって釣り合わんのだからね。それを僕がわざわざ出張する位両親が気を揉(も)んでるのは本人が寒月君に意があるからの事じゃあないか」と鈴木君はなかなかうまい理窟をつけて説明を与える。今度は主人にも納得が出来たらしいので漸(ようや)く安心したが、こんな所にまごまごしているとまた咄喊(とっかん)を喰う危険があるから、早く話しの歩を進めて、一刻も早く使命を全(まっと)うする方が万全の策と心付いた。

 「それでね。今いう通りの訳であるから、先方でいうには何も金銭や財産は入(い)らんからその代り当人に附属した資格が欲しい――資格というと、まあ肩書だね、――博士になったら遣ってもいいなんて威張ってる次第じゃない――誤解しちゃいかん、先達て細君の来た時は迷亭君がいて妙な事ばかりいうものだから――いえ君が悪いのじゃない。細君も君の事を御世辞のない正直ないい方だと賞めていたよ。全く迷亭君がわるかったんだろう。――それでさ本人が博士にでもなってくれれば先方でも世間へ対して肩身が広い、面目(めんぼく)があるというんだがね、どうだろう、近々の内水島君は博士論文でも呈出して、博士の学位を受けるような運びには行くまいか。――なあに金田だけなら博士も学士も入らんのさ、ただ世間という者があるとね、そう手軽にも行かんからな」

 こういわれて見ると、先方で博…

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