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第8章:3

 裁判員に選任された後、青山翔一さん(39、仮名)は、ほかの裁判員らと評議室に案内された。2011年6月13日午前のことだ。徳島地方裁判所は改築前で、非常に狭い部屋だった。

 男性裁判長と女性裁判官2人、そして裁判員と補充裁判員の計11人が、ひとつの円卓を囲んだ。建物や施設は老朽化してはいたが、リラックスできる感じではあった。

 「これからみんなで話し合っていく。番号で呼び合うのはどうかと思うので、名前で呼び合いませんか?」

 裁判長の提案に全員が賛成した。青山さんはまだ緊張していた。ほかの人も口数が少なかった。

 裁判長から休憩を告げられた。「必要な方は、職場や家族に電話してください」。この日から16日まで4日間拘束されることを伝えなくてはならない。

 まず職場に電話した。それから実家へ。「あっ、そう。頑張りよ」と父は言った。妻にも電話した。「うっそ~。本当に選ばれたんだ。頑張ってよ」と声をかけられた。

 裁判長に導かれて、裁判所内を見学。法廷にも案内された。「テレビで見ているのと同じや!」。感動した。法壇の席を見て、「自分がこんなところに座るなんて、すごいことだ」と思う一方で、「それにしても、一番高い、こんな偉そうなところに座るのか」とも感じた。

 「被害者がいる事件だし、真剣に考えて結果を出さなければいけない」。身の引き締まる思いも生まれた。

 評議室に戻ると、裁判長から、被告の男性(裁判当時30)は犯行を認めているので、争うところは量刑だけだという説明があった。

 そのときは何も感じなかったが、いま思えば、否認事件じゃなくてよかった。「やった、やっていないを争うと大変だっただろうな」というのが正直な気持ちだ。

 当初は、自分も含めメンバーは緊張して、話は全然弾まなかった。評議室に用意されていたチョコレートやコーヒー、お茶を口にしながら話すなどして、少しずつ打ち解けていった。裁判官たちは「自由にどうぞ」と菓子や飲み物を勧め、「なくなったらまた持ってきますから」などと積極的に声をかけてきた。気を使っているのがよくわかった。

 その日の午後、初公判が始まった。最初に裁判官3人が入廷し、写真撮影があった。その間、入り口で待機。しばらくして、法壇の後ろのドアから入廷した。

 「いよいよ始まるんだ」

 目の前に女性3人を襲ったとされる被告がいた。大柄でがっちりした体格だった。

 「顔を覚えられたら怖いな。あ…

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