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 国政の与野党対決の構図が持ち込まれた東京都知事選を、政党の支援を受けない小池百合子氏(64)が制した。巧みな選挙戦術で幅広い有権者の支持を集め、女性として初の都知事に就く。五輪や待機児童問題など課題は山積している。都民からは透明でしがらみのない都政を期待する声が上がった。

 「これまでにない選挙戦。支える人の輪が本当に広がっていった。感謝を申し上げます」。31日午後8時すぎ、当選確実の知らせを受け、小池百合子氏は東京都豊島区の事務所で両手を掲げて拍手に応えた。所属してきた自民党の支持者に加え、幅広い層に支持を広げた勝利だった。

 6月29日にいち早く立候補を表明。当初は自民党に推薦を求めたが、党都連が増田寛也氏(64)の擁立に傾くと、一転して「都連は改革が必要だ」などと批判。推薦依頼を取り下げて対決姿勢をとった。

 党都連は党推薦の増田寛也氏以外を応援した場合に除名を含む処分の方針を示したが、強硬な引き締め策が小池氏の追い風に。同党の若狭勝衆院議員や地元の豊島、練馬両区の同党区議らが「除名覚悟」で支援すると、「『弱い者いじめは許せない』と支持が広がった」(陣営関係者)。

 選挙戦では「女性リーダー」のイメージを前面に出し、「東京大改革」を掲げた。舛添要一前知事が公私混同疑惑などで辞職したことを踏まえ、都政の透明化をアピール。「女性活躍のために」と待機児童解消を訴え、都有地を活用した保育所増設などを主張した。2階建て通勤電車の導入や残業ゼロ、首都直下地震に備えた無電柱化、ペット殺処分ゼロのほか外国人参政権の導入反対なども訴えて保守層の支持拡大も図った。

 陣営は無党派層への浸透を重視。告示直後からフェイスブックなどのSNSでイメージカラーの緑色を身につけた支援活動を呼びかけると、街頭演説では日を追って緑色のタオルなどを持って聴き入る有権者が増えた。支援した区議は「自分たちのやり方で戦ったのが良かった」。

 「党や組織を超えて参加いただき、勝利につながった」。小池氏は当選を決めた後のインタビューで語り、同党都議らとの今後の関係について「都民ファーストで考える」と述べ、改善への転換を示唆した。

 選挙期間中、増田氏支持の石原慎太郎・元都知事が「厚化粧の女」と発言。これに反発した女性に支持が広がったのではないか、とテレビのインタビューで問われると、「エールをいただいた結果になった」と答えた。

 「舛添さんの問題について、何が問題だったのか、検証する組織を作りたい」と表明した小池氏。支持者に強い口調で言った。「楽しい選挙だった。結果の重みを感じながら、しっかりと都政に邁進(まいしん)したい」

投票した人は…

 政党推薦のない小池百合子氏に無党派層や与野党支持者ら幅広い一票が集まった。

 支持政党はないものの、7月の参院選で自民候補に投じたという東京都足立区の看護師、東海遥果(はるか)さん(29)は「女性や若者の声を都政に生かしてくれれば」と、小池氏を選んだ。冷静沈着な印象の増田寛也氏との間で迷ったが、都知事としては「国や与党との接点が強すぎる」と感じたという。

 公明支持という大田区のタクシー運転手、石田富由(とみよし)さん(69)は「主張が白黒はっきりしているので、リーダーとしての素質がある」と小池氏に。「様々な圧力を、小池さんははね返す力があるんじゃないか」

 武蔵野市の会社員、菅原早人さん(43)は普段は民進支持。鳥越俊太郎氏(76)に入れるつもりだったが、演説を見て「高齢で任せられるか不安に思った」という。

 共産を支持してきた狛江市の介護施設職員、小林孝宏さん(47)は、小池氏を選んだ理由を「野党への腹いせという気持ちが大きかった」と語る。鳥越氏のために立候補を取りやめた宇都宮健児氏を応援するつもりでいた。「政策よりも、名前が勝てそうだからと候補者を決めた過程が、どうしても納得いかなかった」

     ◇

 《川上和久・国際医療福祉大学教授(政治心理学)の話》 防災や待機児童、高齢化などの都政の課題は、政策論争で違いが出にくい面があった。小池氏は巧みなイメージ戦略で無党派層を引きつけ、自民党支持者も取り込んだと言える。既存の勢力に立ち向かう姿勢をアピールし、都議会の冒頭解散を宣言するなど世間の耳目を引いた。強いリーダーシップで覚悟をもって取り組むと印象づけた。一方で、有権者は混乱は求めておらず、前国会議員の小池氏なら都政を停滞させずに進められそうだと政治手腕にも期待したのだろう。

 《嘉田(かだ)由紀子・前滋賀県知事の話》 小池氏は他候補と違い既成政党の後ろ盾なく突き進んだ姿が評価されたのかもしれない。今や世界は女性がトップに立つ時代。地方自治こそ女性目線の施策が求められている。男性中心の議会はハード面に目を向けがち。初の女性都知事として、教育や子育て支援など未来にむけたソフト面の政策の充実を目指してほしい。女性の就業率も出生率も共に低いのが今の東京。仕事と子育てで二者択一を迫る環境がこの結果を生んだ。都民目線で旧態依然たる議会に真摯(しんし)に向き合い、東京大改革につなげてほしい。