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 いわゆるファミコンの中の絵が3次元に飛び出したと言うべきか。電球やポット、コンロ、消火器といった日用品のオブジェを、ギザギザした階段状の直線だけで作り上げる。素材は陶だと聞いて、二度驚く。

 陶芸家・増田敏也さん(39)は小学生だった1985年ごろ、発売まもない「スーパーマリオブラザーズ」にはまった。工芸高校と大阪芸大で金属工芸を学んだ後、かつて愛したゲームの世界を立体で見たいという衝動にかられ、陶芸を独学した。「実在感のないコンピューターグラフィックと、物質としての存在感が強い焼き物。正反対の二つを結びつけ、ギャップを感じてもらいたかった」

 作り方はアナログだ。方眼紙で型紙を作り、平らに延ばした粘土に当て、ナイフで切り抜いて積み重ねる。とがった角を保つため、焼成温度は1100度以下と低め。表面には釉薬(ゆうやく)を掛けず、つや消しに仕上げる。デジタルの無機質さと焼き物の素朴さが混ざり合い、常識がひっくり返る感覚が心地よい。

 兵庫陶芸美術館で開催中の「Rencontre(ランコントル)」展に作品を出品中だ。窓の桟に傘が掛かり、題名は「サイン」。「傘があるのは家の人が帰っているサインだから」。展示方法にもひねりがある。(安部美香子)