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 兵庫県明石市の歩道橋で2001年、花火大会の見物客11人が死亡した事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元明石署副署長榊和晄(かずあき)被告(69)について、時効の成立を認めて裁判を打ち切る「免訴」とした二審・大阪高裁判決が確定する。最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は12日付の決定で、検察官役の指定弁護士の上告を棄却した。5人の裁判官全員一致の意見。

 事故は01年7月、花火大会会場の海岸とJRの駅を結ぶ歩道橋で発生。見物客らが折り重なって倒れ、11人が死亡し247人が負傷した。神戸地検は同署の元地域官ら5人を起訴したが、元署長=07年に死亡=と元副署長は嫌疑不十分で不起訴処分とした。

 遺族は検察審査会に審査を申し立て、審査会は2度にわたって起訴相当を議決したが、神戸地検は不起訴処分とした。法改正で強制起訴制度ができた後の09年に再び申し立てをし、元副署長は10年、全国で初めて市民の判断により強制起訴された。

 裁判では、強制起訴が認められるまでの間に迎えた同罪の時効(当時5年)が成立するかが争点となった。指定弁護士は「共犯者の公判中は時効が停止する」とする刑事訴訟法の規定に基づき、元副署長は現場責任者だった同署元地域官=同罪で10年に有罪確定=との間に共犯関係があり、時効は成立していないと主張していた。

 第三小法廷は、共犯関係が成立するためには「注意義務に共同して違反したことが必要」とする判断を示した。その上で、元地域官との関係について「元地域官が警備計画の責任者だったのに対し、元副署長は警察署全体の指揮監督の補佐をする立場にあり、役割分担は異なっていた」と認定。「事故を防ぐために両者が負うべき注意義務は共同だったとはいえない」として共犯関係を否定し、一、二審の免訴判決を支持した。元地域官ら5人はすでに有罪が確定しており、今回の免訴判決が確定すれば、この事故の刑事責任を問う裁判は終結する。

 元副署長の裁判では、有罪か無罪かの判断はされなかったが、同署の事前の警備態勢の不備が明らかになった。一審・神戸地裁判決は「事前の警備計画で事故対策に重点が置かれていなかった」と指摘。二審判決は、事故の半年前に同じ会場であった花火大会で歩道橋が混雑したことなどを挙げ、元副署長が事故を予見できた可能性を指摘した。

 遺族らは昨年7月、最高裁に一、二審を見直すように求める要請書を提出。「事故原因の究明や責任の所在の明確化と再発防止につながる判決を求める」と訴えていた。(市川美亜子

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 〈強制起訴〉 検察官が決めた不起訴処分について、11人の市民からなる検察審査会が、2度にわたって「起訴すべきだ」とする議決を出すと必ず起訴される制度。起訴する権限は検察官が独占してきたが、市民感覚を反映させるのが狙いで検察審査会法が改正され、2009年に施行された。裁判所が指定した検察官役の「指定弁護士」が起訴し、立証する。