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 【松尾慈子】今年4月、吉野朔実が急逝した。心の深層に潜るように、登場人物の感情をていねいに描く作品をつづってきた漫画家だ。登場人物たちの感情の揺らぎは、読む者にも少なからぬ感情の波を呼び起こした。私は読後いつも浮遊するような、世界が薄皮一枚向こうにあるような、不思議な感覚を味わったものだった。代表作は「ジュリエットの卵」「少年は荒野をめざす」「恋愛的瞬間」など多数。吉野作品とともに遅い青春を過ごした私は、その訃報(ふほう)を聞いてぼうぜんとした。

 そして7月、吉野の残した原稿をまとめた本作「吉野朔実は本が大好き ALL IN ONE」が出版された。「本の雑誌」に1991年10月号から連載された書評エッセー漫画「吉野朔実劇場」、単行本で全8冊を1冊にまとめたものだ。私はもちろん7巻までを発刊のつど買っているのだが、ボーナストラックがあることに心引かれて、税抜き価格3千円する本作を買った。厚さ3・5センチ。友人に貸して回ろうと思うのもためらわれる重さである。

 連載開始から実に25年。しかし、今読み返してもまったく古さを感じさせない。ここに登場する本は、SF、エッセー、ガイド本、写真集、童話、ノンフィクションと、幅広い。吉野は友人知人に薦められるまま本を読み、もちろん「積ん読」(余談だが会社PCで「つんどく」と打つと一発で「積ん読」と変換された)もありつつも、本を語る日常をつづっている。

 本を読む面白さは、「知らない…

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