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 初参加校と強豪校との対決は中盤まで接戦に。次の試合も延長戦になり、劇的な幕切れ。そして、選抜出場経験のある伝統校の「最後の夏」を支えたのはスタンドから響く大声援だった。大会第5日も選手たちの最後まで諦めない姿に、多くの人が涙を流した。

初陣 全力で楽しんだ 和歌山南陵・藏屋義経君

 「初めての公式戦で智弁和歌山と対戦。とにかく楽しかった」

 試合中、笑顔が絶えなかった和歌山南陵の主将、藏屋義経君(1年)は振り返った。

 新設校の和歌山南陵は今年が大会初参加で、選手は全員1年生。「負けるって最初から思うのなら棄権したほうがいい。勝ちに行くぞ」。試合前、元プロで日ハムやオリックスで2軍監督などを務めた経験もある岡本哲司監督(55)が選手らに伝えた。

 試合は、エース水原伶君(1年)の好投で接戦に。初回は三者凡退、二回は4人で切り抜けた。スコアボードに0が並ぶ度、大勢の観客が集まったスタンドから拍手と歓声が上がった。

 七回表、チャンスが来た。連打や四球などが絡んで2死満塁。岡本監督は勝負に出た。水原君に代え、代打に奴田(ぬた)幸希君(1年)。回の途中から継投した智弁和歌山のエース橋祐我君(3年)の3球目をたたいた。打球は三遊間へ。全力疾走で一塁に飛び込み、見上げると塁審の判定はセーフ。相手の送球が乱れた間に2人が本塁を踏み、一時逆転した。岡本監督は「迷いなく勝負に出た。僕の勘です」。スタンドがどよめいた。

 智弁和歌山の高嶋仁監督(70)は嫌な流れを感じていた。「自分のプレーをして点をとれ。それで負けたら監督の責任だけど、お前ら自分らのプレーしてへんやないか」。そう選手に伝えた直後の七回裏、落ち着きを取り戻した智弁和歌山が強打を見せつけた。

 「自分らの守備の乱れから得た好機を逃さない。攻撃が止まらなかった。やっぱり、強かったですね」と藏屋君。ただ、「この試合が僕らの土台になる。ここから一つずつ、やり直したい」とも意気込む。和歌山南陵の物語が始まった。(真田嶺)