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(18日、栃木大会 矢板中央4―3佐野日大)

 九回、1点差まで詰め寄ってなお2死一、二塁。見逃し三振で佐野日大の五十幡亮汰(3年)の夏が終わった。その瞬間、五十幡はバッターボックスに崩れ落ち、目には涙があふれた。

 陸上界の注目株だった。2013年の全日本中学校陸上競技選手権の100メートルで優勝。しかし、五十幡は「チームプレーが楽しい」と高校では迷わず野球を選んだ。そのレースで3位だった五輪候補選手と比較され、「サニブラウンに勝った男」とメディアをにぎわせた。

 日本一の足を駆使したプロ野球選手が夢になった。が、「よーい、ドン」で始まる陸上競技と違い相手との駆け引きがある盗塁は難しかった。その技術を磨くために遊撃手となった。内野守備での打球判断の一歩目と投手のモーションを盗む一歩目が似ていると感じたからだ。

 結果はこの大会で実を結んだ。栃木大会では18日の矢板中央戦を含めて3試合で3盗塁。この日は2打席で内野安打を記録するまさにチームの韋駄天(いだてん)の活躍だった。

 その分、チャンスで打てなかった最後の打席の悔しさが膨らんだ。3点差だった九回裏、石山諒(3年)、戸泉貴陽(3年)の2者連続本塁打で詰め寄り、なおも仲間が好機を広げてつくった打席だったからだ。

 小3の時にがんで亡くした天国の母恵子さんに願いを伝えた。「母さん、頼む。打たせてくれ」。しかし、相手投手の投じたアウトコースの直球に手が出ず、試合は終了した。「仲間がつくってくれたチャンスで打てなかった」と五十幡は目を赤くさせた。

 大会直前の6月26日。父雅弘さん(50)の誕生日に「父、(天国の)母を甲子園に連れて行けるように悔いないように頑張ります」とメールを送った。全力を尽くした夏だからこそ夢を応援してくれた両親に言うことができる。「今までありがとうございました」(吉田貴司)