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 東京都知事選(31日投開票)で、主要候補が続々と多摩地域に入っている。神奈川県湯河原町の別荘通いに公用車を使ったことを問題視された舛添要一前知事が「奥多摩より早く都庁に戻れる」と発言したことで注目も集めた。人口減少や高齢化の影響が出ている地区もあり、各陣営は同じような問題を抱える島部も含め、都心部との格差解消を掲げて支持を訴えている。

 「多摩地域がまだまだ評価されていない」。22日夜、青梅市の個人演説会で増田寛也氏(64)は、約600人を前にこう切り出した。「全国の多くの人は東京の区部を見ているが、26市3町1村の多摩地域や島部、それぞれいいところがあり、課題も違う。たまに来るじゃなくて、必ず足を運ぶ」と続けた。

 増田氏はこれまでも、舛添氏が多摩地域を訪れなかったと批判。週明けには奥多摩町での街頭演説も予定する。23区から多摩地域への移住者を増やす施策にも言及している。告示後の10日間で23区外での街頭演説などの回数は25回にのぼり、小池百合子氏(64)の10回、鳥越俊太郎氏(76)の4回を上回る。

 小池氏は告示翌日の15日、他の主要候補者に先駆け、都心から約300キロ南の八丈島に乗り込んだ。島の電力の2割強を賄う地熱発電所を視察し、農産物直売所や、島の伝統織物「黄八丈」の工房も巡った。

 その後、2カ所のスーパー前で街頭演説し、「皆さんの生活、環境を守り、持続可能な島にする。自然再生エネルギーを最大限利用して、エコアイランドを作りたい」と訴えた。公約では「環境に配慮しつつ、島部での命と安全を守る」を掲げる。

 小池氏は21日には檜原村や奥多摩町を訪れた。インフラ整備などで多摩地域が23区に劣るとの指摘を意識した「多摩格差ゼロ」も公約に盛り込んでいる。

 鳥越氏は23日、高齢化や人口減などの問題を抱える多摩市の多摩ニュータウンを視察。老朽化した団地を国内最大規模の工事で建て替えたマンションを訪れて関係者から説明を受けた。

 これまで多摩地域への言及は少ないが、視察後「都営住宅を含めた新しい住宅づくりに、このモデルを参考にしたい」と話した。

 25日には島部の大島町を訪問する。陣営によると、3年前に土砂災害があったことや、他の候補者がまだ行っていないことから選んだ。被災地に献花し、役場前での演説を予定。陣営幹部は島部でも区部との格差問題があるとし、「島訪問は弱者やマイノリティーへの目配りを示す意味もある」と狙いを明かす。(小林恵士、八角健太、伊藤あずさ)

「奥多摩に興味がないんでしょ」

 舛添氏の発言で引き合いに出された奥多摩の住民は、都知事選をどんな思いで見ているのか。

 都の西端で5千人余りが暮らす奥多摩町。町の大部分が山林で、65歳以上の高齢化率は5割に迫る。都庁から約2時間かけ、JR青梅線で終点の奥多摩駅へ。駅前で発言への感想を尋ねると「私たちに失礼」「奥多摩に興味がないんでしょ」と返ってきた。

 21人が立候補した都知事選で、駅前の掲示場に貼られたポスターは7枚。都心で見かけた掲示場の11枚よりも少ない。土産店経営の女性(70)は「いつも都知事選の候補はほぼ来ないし、あまり関心もない」と話す。

 だが、地域の課題はある。町の人口は10年前から2割減った。町も高校生までの医療費助成や若者の移住を促す助成を充実させてきたが、商店を営む佐藤彰さん(46)は「行政には企業誘致で雇用もつくり、定住者を増やしてほしい」と訴える。

 奥多摩町の南隣は人口約2300人の檜原村。多摩地域で唯一の村だ。村役場近くには今月中旬、ミニスーパーがオープンした。村内の商店が約10店に減ったため、村が住民の利便性向上のために整備し、運営は第三セクターが担う。買い物を終えたパート女性(53)は誰に投票するか決めかねていた。「取り残された場所でなかなか候補者が回ってくれなくて……。まずは来てほしい」(佐藤恵子)