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 国際オリンピック委員会(IOC)は、夏季五輪の国別メダル獲得数で3位以内に入り続けるスポーツ大国ロシアとの衝突を避ける現実路線を選んだ。世界反ドーピング機関(WADA)はドーピングに染まったロシアの実態を暴くことでIOCに厳しい決断を迫ったが、IOCはWADAほどの強い姿勢は打ち出せなかった。クリーンなロシア選手は出場を認めるが、クリーンかどうかは各国際競技団体が決めろという逃げ腰の結論に収めた。

 ロシア選手団全体に連帯責任をとらせるのか、個人の権利を尊重するのか。難しい局面で、IOCは自らが先に判断することを避けてきた。19日の緊急理事会で結論を先送りして、スポーツ仲裁裁判所(CAS)のロシア陸上選手の五輪出場をめぐる裁定を待った。

 CASの裁定は、出場を認めないとする国際陸連の決定を支持した。しかし、同時に「IOCはこの仲裁裁判の当事者ではないので、ロシア・オリンピック委員会からリオ五輪への選手エントリーをIOCが受け入れるか拒否するかについて、CASは判断できない」と球をIOCに投げ返してきた。

 WADAもCASも、もともとはIOCが主導して設立した独立機関だ。しかし、3者の足並みはそろわず、責任の押し付け合いを繰り返し、時間だけが過ぎた。8月5日に開会式を迎えるリオ五輪が迫り、一部にはリオへ見切り発車で出発するロシア選手も出始める中、IOCは強い姿勢をとれなかった。

 ドーピング違反はこれまで大半が、選手やコーチの個人的な問題だった。しかし、2015年初めに発効した新しいWADAの統一規定でドーピングに関する捜査権が大幅に強化され、今まで分からなかったドーピングの組織的、国家的な闇の部分が明らかになってきた。こうした事態に対処するために、新しい反ドーピングの枠組みをスポーツ界が一体となってつくり直す必要があるだろう。(酒瀬川亮介)