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 オハイオ州クリーブランドで開かれた共和党全国大会は、ドナルド・トランプ氏を党の正式な大統領候補として指名し、幕を閉じた。政治の話題はワシントンや東海岸が中心だが、全国大会前からシリコンバレーで話題になっていたのが、ペイパル共同創業者でフェイスブックの役員でもあるピーター・ティール氏が、大会で演説することだった。民主党支持者の多いシリコンバレーの中で、珍しくトランプ氏の熱心な支持者として知られるティール氏。独特の政治観を持ち、やることも語ることもとっぴな人物で、興味が尽きない。しかし、シリコンバレーでは、大会前から「彼はいったい何をしゃべるのか」「シリコンバレー代表のように振る舞われては困る」といった懸念が広がっていた。

 ティール氏は、以前このコラムでも取り上げたことがあるが、自分が同性愛者であることを報じたネットメディアの「報復」のため、知人の裁判に資金協力をしてこのメディアを破綻(はたん)に追い込んだと言われる人物だ。政府の介入を嫌う「リバタリアニズム」の信奉者として知られ、09年には「自由と民主主義は両立しない」などと書いた文章を発表して話題になった。巨額の資産を背景に、やることも考えることも桁外れだ。

 それを象徴する一つに、彼の進めるプロジェクトがある。海の上にどの国からも干渉されない独立国家を建設する、というもの。いまの世界を作っている国家の制度では新しいイノベーションは生まれず、法律や税制など国の制度に縛られてしまう。それならば既存の国家の外の公海上に島を作り、誰の介入も受けない国を作ろう、というものだ。彼はこれをただの絵空事として見せるのではなく、実際に島を作るための技術者を含め、あらゆる専門家を抱えた団体を設立し、実現に向けて実際にプロジェクトを進めている。

 もっとも、最近では物資の補給や技術的な問題から、公海上に浮かぶ島というアイデアはあきらめて、この趣旨に賛同してくれる「ホスト国」を探しているという。どこかの国のすぐ近くの沖合に島を作ることで、建設も、実際に暮らすことも現実的にしようとしているらしい。

 他にも、大学を辞めて起業を促す財団を作ったり、不老長寿の研究をしたり、宇宙に活路を見いだしたりと話題に事欠かない。やっていることの是非はともかく、こうした極端な発想の持ち主が、排除されることなくIT業界の中心にいること自体は、この業界の多様性を見るようで興味深い。

 ティール氏は、同性愛者でもある。いまではほとんど「公然の秘密」として広く知られているが、彼自身がこれまで公の場で語ることはなかった。共和党は同性婚に否定的で、同性愛者の権利擁護にも消極的だ。共和党の全国大会という場で、同性愛者として広く知られている人が演説することは非常に珍しく、その点でもどんな反応が起きるのかにも注目が集まっていた。

 自身も同性愛者のベテランIT記者カーラ・スウィッシャー氏は、演説前に、「彼はシリコンバレーの基準で見てもかなりの変わり者だ。彼がシリコンバレーを代弁して語っていると考えるのは間違いだ」と釘を刺した。

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