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 最長で1年半とれる育児休業を延長することを、政府が検討している。子どもの預け先がなくて退職を覚悟する人もおり、延長で雇用の継続につなげたい考えだ。ただ、育休が長引けば復職へのハードルが高くなるなど、課題は多い。子育て中の親や支援団体からは疑問の声もあがっている。

 「延長はまあまあ賛成。預け先が見つからない時の選択肢が広がる」。子育て中の東京都中野区の会社員女性(40)は話す。

 2011年12月に長男を産んだ。育休は原則、子どもが1歳までだが、1年後に保育施設の空きはなかった。こうした場合、育児・介護休業法の規定で育休は1年半まで延ばせる。なんとか13年4月に預け先を見つけたが、この時点で育休の期間は残り2カ月。一時は退職も覚悟した。

 保育の受け皿不足で、親は出産前から預け先を探す「保活」に走り回る。女性は「子どもが歩き始める1歳ちょっとで預けられれば一番いいが、1歳児の枠は少ない」。1歳を過ぎても預け先が見つからないと困るため、今年6月末に産んだ長女は来春から預けたいという。

 「1億総活躍社会の実現の加速」に向け、政府は8月にまとめた経済対策に育休期間の延長を盛り込んだ。仕事と育児の両立を支援するためといい、「雇用継続のために特に必要な場合」に2年程度まで認める方向だ。厚生労働省の審議会で議論し、来年度からの実施を目指す。

 ただ、育休期間が延びても、預け先が見つからなければ復職が難しいことに変わりはない。育休中の千葉県市川市の女性(35)は「育休を延長しても、その期間内で保育施設が見つかる保証はなく、会社をクビにならない期間が1年半から延びるだけ。本当の課題は、なかなか保育施設に入れないこと」と話す。

 育休をとる期間が長引けば、復職時に仕事の感覚や人間関係を取り戻すのが難しくなりかねない、というデメリットもある。

 厚労省が調査会社に委託して13年度に実施した調査では、育休の取得期間が長い人ほど育休をとる前の感覚に戻るのに時間がかかり、復職後の仕事内容も希望と違うことが多かった。復職後の仕事内容が希望通りでなかった人の16%は「できれば早く仕事をやめたい」と答え、希望通りだった人の5%を上回った。

 3人を子育て中の東京都武蔵野市の30代女性は、「会社から『休みが長引くと前と同じ職場に戻れるか分からない』と言われた。早く復職するためにも、育休の期間を延ばすより、まずは保育施設に入りやすくしてほしい」と話す。

 国立社会保障・人口問題研究所の調査では、妊娠時に就業していた女性で、育休をとって復職できた割合は正社員が約6割なのに対し、非正規社員ではたった1割ほど。上司に「迷惑をかけるな」などと言われて権利を主張しづらくなったり、雇い止めにあったりする被害は後を絶たない。

 妊娠、出産、子育てをしながら働き続けられる社会の実現をめざすNPO法人「マタニティハラスメント対策ネットワーク」の小酒部さやか・代表理事は「いまでも育休を取れない人が大半なのに、さらに延長すれば、企業は余計に育休をとらせない方向に向かうのではないか」と懸念する。

 育児の負担が女性に偏ったまま育休期間が延びれば、女性のキャリア形成に悪影響が出かねないことも心配だという。「政府は女性の活躍と言いながら、本当にやる気があるのか疑問だ。まずは育休をきちんととらせることが大事だし、子育ての負担を分散させるために男性の育休取得の促進策も検討するべきだ」と指摘する。(末崎毅)