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 合言葉は「必笑」。13日の大会第7日第4試合で、今春の選抜優勝校の智弁学園(奈良)は鳴門(徳島)に2―5で敗れ、史上8校目の春夏連覇を逃した。それでも選手たちは、どんなに苦しい展開でも最後まで笑顔を絶やさず戦った。

 「こんな機会、もう経験でけへんで。楽しんでいこうや」。同点で迎えた九回表2死満塁のピンチ。伝令に来た松本大地君(3年)が笑顔で話す。エース村上頌樹(しょうき)君(3年)も「オッケー」と笑顔で答える。野手の顔もほころんでいた。勝敗を左右する土壇場を迎えたとは思えない光景が、そのマウンドにあった。

 春夏連覇の重圧で奈良大会の前半は野球を楽しむ余裕すらなかった。3回戦は九回まで2点差をつけられていた。「一度死んだ」と小坂将商(まさあき)監督(39)は試合後に話したほどだ。

 副主将の納(おさめ)大地君(3年)はOBに通信アプリLINE(ライン)で相談。2012年に選抜大会に出たが、春夏連続出場の重圧から奈良大会で敗れた世代だ。帰ってきた返事は「気楽にいけよ 笑え笑え」だった。

 「笑え、笑え!」。納君は劣勢の試合中にそう声を張るようになった。もう1人の副主将の大橋駿平君(3年)も「『必笑』で行こうや!」と叫び、チームの合言葉になった。奈良大会準決勝、決勝と逆転で勝ち抜いた。

 村上君は「笑うと、みんなで声をかけ合うようになる。1人じゃないという気持ちになれる」と言う。

 この日再三のピンチでも表情は沈んでいなかった。3点を追う九回裏の攻撃。選手たちは笑顔で「つなぎの野球をやっていこう」と叫び続けた。試合後、主将の岡沢智基君(3年)は「勝たないと意味がない。でも『必笑』は最後までやりきれました」と目を潤ませた。「よくやった」。こわばった表情の岡沢君は小坂監督から頭をなでられると、再び破顔した。(菅原雄太)

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