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 熊本地震発生直後の被災地でのヤフー検索ワード分析。東北大学災害科学国際研究所の佐藤翔輔助教(災害社会情報学)は、災害関連の23語句に注目し、「前震」が起きた4月14日から21日までの8日間について、検索された量が増えた時期と減った時期が似ているものをグループ分けした。その分析結果から見えた傾向とは――。

 佐藤助教は、東日本大震災や熊本地震に関する研究を手がけており、東日本大震災の被災地の変化を写真で見せるウェブサイト「復興へ カワルみちのく風景」(http://shinrokuden.irides.tohoku.ac.jp/別ウインドウで開きます)なども開設している。

前震翌日ピーク、その後も上昇「地震保険」

 「前震」の次の日(15日)にピークをむかえ、その後も徐々に上昇したのは、以下の単語だった。

【地震保険】

【地震保険 家財】

【熊本地震 余震】

【震度】

【震度階級】

 「熊本地震 余震」「震度」「震度階級」は、地震発生後、ずっと増加しており、余震への心配が長期間にわたって続いていたことが浮かぶ。検索データからは、まず身の安全を守ろうとした動きが見て取れる。

 「地震保険」「地震保険 家財」の語句からは、生活再建への関心がうかがえる。東日本大震災と違って、津波や原発事故などがなかったことから、避難先ではなく、被災した現住所での再建をめざす人が多かったことが見える。

 「命を守る行動と、生活再建に向けた行動が同時に起きていた」。佐藤助教は、これらの語句が地震初期にピークを迎えていた点からそう語る。

 「家の再建に早い段階から動いていることがわかった。そうした事実を知るために、これまでは一軒一軒聞き取りをする必要があった。検索データから見えた動きは、防災を考える上で貴重な情報になり得る」と話す。

「前震」以降、徐々に上昇

 14日から徐々に上昇していったのは以下の語句だった。

【西部ガス】

【地震速報】

【西部ガス 熊本】

【熊本地震速報】

【地震速報 今】

【地震保険 金額】

 今回、西部ガスは地震発生直後の4月15日午前0時6分からガス供給停止の情報を発信していた。当初から生活再建に動いていた被災者の多くも、ガス関連の情報を求めていた。

 佐藤助教は阪神淡路大震災での経験から「自宅再建の鍵を握るのは、早期に復旧しやすい電気、水道ではなくガス」と指摘。今回、ガスの検索が発生直後から増えていったことについて、「被災地の人々が適切なタイミングで、適切な情報を得ようとしていたことを示す一番のデータになった」と評価する。

 「西部ガス 熊本 復旧」は6日目の19日から急上昇した。佐藤助教は「本震から数日経ち、自宅再建を本格的に考える人が増えたことで、『ガス』関連の検索数がさらに伸びたと思われる」と分析する。

発生2日目にピーク「熊本 休校」

 15日にピークを迎えた後、その後は目立った検索の動きがなかったのが以下の語句だった。

【余震】

【熊本地震被害】

【熊本 休校】

【震度7】

 「熊本地震被害」からは、まず被害状況の把握に動いたことが見て取れる。一方、その後、検索が増えなかったことについて佐藤助教は「ネットでは身近な情報がわからなかったので検索をやめたのか、県内の全体状況がわかった時点で満足したのかもしれない」と分析する。

 「震度7」が増えたのは、めったに起きない地震の規模について、詳しく知ろうとした人が多かったとみられる。

3日目にピーク「避難勧告」

【避難勧告】

 16日にピークをむかえたのは「避難勧告」だった。気象庁から全国一斉に発信される震度情報などと違い、地元の自治体が出す「避難勧告」は、自分たちの生活に直接、関わってくる。

 16日に震度7の「本震」が発生したことを受け、自宅にとどまるべきかどうか、判断材料を探す人が多かったようだ。

4日目にピーク「緊急地震速報」

【緊急地震速報】

 17日に最も多く検索されたのは「緊急地震速報」だった。14日の「前震」、16日の「本震」と震度7が続けて2回起きたことで、その後も、余震が起きるのではないかと心配した人が検索したと思われる。

 17日より前に目立った検索の量がなかったことについて、佐藤助教は「17日に『本震』が発生したことで、被害を警戒する人が増えたとみられる」と指摘した。

まとめ

 佐藤助教はまず、「大規模な停電が長期間続いた東日本大震災と違って、災害発生直後の検索データが取れたことは大きい」と話す。

 そのうえで、「検索する際にハードルとなるのが、その単語自体を知っているかどうか。今回のデータでは『震度階級』などふだんなじみのない語句も検索されていた。検索の予測機能など、ネットの集合知が有効に働いたのではないか」と分析する。

 今後も大災害の発生直後に、ネットに情報を求める人が増えるとみられる。

 佐藤助教は「大事な情報を発信するリテラシーがますます重要になる」と指摘する。「情報の発信者は、被災者が求めている情報を的確に把握し、それに対応した情報を発信する、その両方が求められる」(奥山晶二郎

     ◇

 さとう・しょうすけ 東北大学災害科学国際研究所助教。専門は災害社会情報学。災害時の情報管理やアーカイブなどについて研究。熊本地震についてはウェブで発信された報道の動向の分析も手がけている(http://irides.tohoku.ac.jp/event/2016kumamotoeq_media_info.html別ウインドウで開きます)。