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 安全保障関連法を違憲とする憲法学者らの議論に再考を促し、安倍内閣批判も交えた元最高裁判事の論文を、法曹関係者からなる財団法人・日本法律家協会の機関誌が掲載しなかった。協会は「予定されている特集テーマに直接関連しないから」と説明するが、元判事は「理解不能」として協会を退会した。

 論文の著者は元最高裁判事で行政法の重鎮、藤田宙靖(ときやす)・東北大名誉教授。当初は日本法律家協会の機関誌「法の支配」(季刊)に掲載を求めたが、昨年12月に協会の編集委員会から当面応じられないと伝えられて退会し、月刊誌「自治研究」(第一法規)の今年2月号に同趣旨を寄稿した。

 藤田氏は、協会の編集委員長から説明を受けたという不掲載の経緯を「自治研究」で紹介。掲載に賛成論もあったが、「多数の現職裁判官、検察官が会員の協会の機関誌という性格と、元最高裁判事という(藤田氏の)地位に伴う影響力の強さが考慮された結果」と伝えられたという。

 論文では、安保法の前提となる集団的自衛権の行使容認で「時の政権が憲法9条改正手続きをとらず、内閣法制局長官の首をすげ替えてまで解釈を変えさせた」として「非常識な政治的行動」と指摘。安倍晋三首相の「(憲法解釈で)最高の責任者は私」という発言は「真に謙虚さと節度を欠いた」としている。

 一方、「多くの憲法学者の指摘は安倍政権への怒りの表現で、政治的思いを違憲の結論に直結させれば憲法学の足元を危うくする」と主張。「今回の事態が憲法学に突きつけた問題」を法律学として整理することを論文の本旨とした。昨年9月に成立した安保法をめぐっては、多くの憲法学者がアンケートや集会などで違憲との考えを表明した。

 藤田氏は「法の支配」への不掲載について、「元最高裁判事の新安保法制を素材とする論稿を現職の裁判官、検察官に読ませることはできないということか。日本法律家協会の名が泣く」と「自治研究」に記した。

 協会は朝日新聞に対し、藤田氏が編集委員長から伝えられたという内容は「(昨年12月の)編集委員会の議論で出た意見だろう」としつつ、不掲載は「予定されている直近号や近い号の特集テーマに藤田論文が直接関連しないことから」だったと説明している。

 日本法律家協会は1952年に、新憲法下で法曹関係者が協力してより民主的な司法運営を目指すとして発足し、会員は弁護士、裁判官、検察官、学者など約1700人。「法の支配」の編集委員会には現職の裁判官や法務省幹部もいる。(藤田直央