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 改良工事中の阪神甲子園駅の屋根にたった一つ、直径約20センチの白球が取り付けられている。高校球児にちなんで阪神電鉄と施工業者の遊び心を詰めた、いわば「幸せのボール」。登場から1年余り経ってもほとんど知られていない。熱戦が続いた夏の全国高校野球選手権大会を訪れた駅利用者らを、屋根からひっそり見守っていた。

 駅ホームを覆う約2300平方メートルのテント素材の大屋根。2015年1月に架けられた。張り巡らされた鉄製の梁(はり)は338個の鉄の球体で結びついている。同3月、その中に白球をプリントしたシートが巻かれた球体が登場した。

 駅の営業を続けながら、11年11月からホーム拡幅などの改良工事が進む。白球と球児のユニホームをイメージした白い屋根を甲子園駅に架けた。鴻池組・ハンシン建設特定建設工事共同企業体が施工を担った。

 12年、会議で鴻池組の社員が「せっかく大工事をするなら、野球にちなむ隠しアイテムを作りませんか」と提案した。阪神電鉄の担当者も「それは面白い」。

 野球選手のサインを構内に隠すという案も出たが、屋根にボールを飾ることに落ち着いた。当初は屋根の最上部付近に設ける話だったが「誰にも見つけられないのは寂しかった」と阪神電鉄の担当者は明かす。

 結局、梅田方面からの電車を降りた客が改札口に向かうまでの動線上に据え付けることに。阪神電鉄の担当者は「駅に降りたその瞬間から野球気分で楽しくなってもらえれば」と話す。

 阪神電鉄によると、ボールに気づいた人がSNS上で投稿することはまれにあるが、問い合わせを受けたことはない。「知る人ぞ知る存在」になっている。

 鴻池組の建築事務所長、立野哲也さん(52)は「甲子園球場への玄関口の駅で野球にちなむ隠しアイテムを偶然見つけて幸せな気分になってほしい」。藤森義一駅長(48)は「くれぐれもホームでは安全に気をつけて見てもらいたい」と話す。(長谷川健)

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