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 熊本地震の発生直後、被災地で特に多く検索されたワードが「避難所」だった。ビッグデータ解析の専門会社「かっこ」(東京都港区)の執行役員・成田武雄さん(41)と、地震発生直後からネット上で避難所などの情報発信に動いた支援グループの発起人・塚田耀太さん(22)に、検索データから読み取れることは何か、話を聞いた。

求める避難所情報はあったのか?

 データは、インターネット検索大手のヤフーが分析した。4月14日の「前震」発生直後の3時間に被災地で検索されたワードをみると、具体的な自治体名を入力して避難場所を探しているケースが目立った。

【玉名 避難】

【八代の避難場所】

【菊池市 避難場所】

 こうした被災者のニーズに応えられる情報は、そもそもネット上にそろっていたのだろうか。

 成田さんは、かっこ社で統計事業を担当する。同社は熊本地震前の今年2月、独自のプログラムを使い、全国1896自治体(政令指定市の行政区含む)の公式ホームページを調査。災害時の避難所や避難場所の住所が公表されているかを調べていた。

熊本県は全国最低レベル

 その結果、熊本県は、熊本市内5区と44市町村の計49自治体のうち、住所を公表していたのは半分以下。自治体数でみる公表割合は40%台で、都道府県別では全国最低レベルだった。

 被害が大きかった地域でみても、自治体によって公開の度合いに差があった。震度7を記録した西原村や多くの住民が避難した阿蘇市は避難場所のみで住所は公開していなかったのに対し、震度7を2度記録した益城町や一時10万人以上が避難した熊本市は避難所の住所と名前を公開していた。

 成田さんは、「『避難所』と自治体名で検索してヒットしなければ、普通であればキーワードを変えたり、SNSでの情報収集に切り替えたりするはず。検索の量が特に多かったのは、それだけ避難所の情報を求めた人が多かったと考えられる。しかし、検索結果は、逃げ場を求めた人たちにとって親切でないものだったのでは」と指摘する。

「ストック情報」の備えが大切

 避難所の住所といった情報は、平時から準備して公開しておくことができる、いわば「ストック情報」だ。ヤフーの検索データの分析を見ると、避難所のほかにも、こんな語句の組み合わせがある。

【公衆電話 場所】

 災害時の連絡手段として公衆電話がどこにあるか、検索してすぐにわかるように用意しておくことも重要だと推測できる。

 さらに、外国人や外国語が話せない日本人向けの防災情報が英語版で用意されているかどうか、といったことも「ストック情報」といえる。

 成田さんによると、検索データから何がストック情報なのかを見つけ出すことができれば、全国の自治体がこうした情報をどの程度ネット上に用意しているか、調べることは可能という。「災害時に人々が検索する情報は何なのか、満足いく情報はそろっているのか、検索データを手がかりに考えることができる」と成田さんは話す。

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「優先すべき情報が見えた」

 ネット上にそろっていなかった「避難所」などの情報を、地震発生直後から補っていったのが、塚田さんが発起人の支援グループ「Youth Action for Kumamoto」だ。大学生や社会人が参加したグループで、塚田さんも慶応大の学生。

 メンバーは、4月14日の前震直後から、被災者向けの情報発信を始めた。避難所や炊き出しの場所、給油可能なガソリンスタンド、営業しているスーパーなどの情報を地図上に表示した災害情報マップを作り、ネットで公開した。朝日新聞などメディアが現地で確認した情報や、各自治体がバラバラに発信した情報をまとめ、すべての情報がひと目で分かるように表示した。

 ヤフーがまとめた検索データをみて、塚田さんは、「地震発生当時に、なんの情報を優先的に発信するべきだったか、見えました」と語った。

「避難所」か、「炊き出し」か

【熊本 避難所】

【熊本 炊き出し】

 検索データのなかから、この二つのワードについて、「前震」発生の4月14日から23日まで抽出し、その推移をみた。

 すると、「熊本 避難所」は、「本震」当日の16日がピークで、その後は少ない。一方、「熊本 炊き出し」は18日がピークで、その後も高い検索数を維持している。

 一方で、塚田さんたちが作った災害情報マップは、まず16日に炊き出しや給水などの情報を公開し、翌17日朝に避難所情報を公開した。「被災した人は、安全な場所を求めてまずは避難所を探すものだと分かりました。炊き出しは、少し時間が経ってからでもよかったんですね」と塚田さんは話す。

「避難所の把握だけで膨大な時間」

 熊本地震では一時、11万人を超える人々が避難した。自治体の指定避難所では収容しきれず、指定外の場所に多くの住民が避難したため、避難所の全体像は、自治体ですら把握に手間取った。

 塚田さんたちも、自治体が公開していく情報を毎日チェックし、追加の避難所として災害情報マップに加える作業を続けた。

 塚田さんと共に作業に当たった会社員の藤田周さん(27)は、「熊本地震では、自治体は避難所の把握だけで時間をとられすぎた。検索データからも、避難所の確保と把握が第一にすべきことだと分かったので、平時から準備しておくべきだと思う」と指摘した。

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 なりた・たけお 1974年生まれ。ビッグデータから「ちょっとだけ未来についての判断材料を提供する」を目指す会社「かっこ」の統計事業部部長。データサイエンスを駆使した要因分析や、需要予測、自動化、最適化などのサービスを企画、提供している。オープンデータを活用した独自の調査結果を、主にwebメディアを通じて定期的に発信している。

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 Youth Action for Kumamoto(YA4K) 熊本・大分の支援コミュニティー。4月14日の前震直後に全国の学生や社会人の有志で結成。炊き出しや営業中のスーパーの場所など被災者に役立つ情報をウェブ地図上に見やすく表示して提供したほか、支援者向けにボランティアに関する情報も発信。作業に参加したメンバーは約50人。