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 「猫」第六章で迷亭は「十四通りに使える」鋏(はさみ)を取り出し、好奇心旺盛な苦沙弥の細君に「大得意」になって見せる。巧みな商品説明からうかがえるのは、この袂(たもと)に入る小さな新式の鋏が、「頗(すこぶ)る重宝な」最先端の技術とアイデアによるものだということだ。何にでも使え、使途は多いほどよい、という価値観がそこある。現在はマルチツールの器具が普及しているが、100年以上前に本当にあったのだろうか。

 「猫」連載開始当時、洋書の他に輸入文具も扱う丸善の、明治38年1月号や2月号の「学燈(がくとう)」に、1ページ大の「変用器械鋏」の広告が載っている。興味深いのは、作品本文に、「蠅(はえ)の眼玉位(くらい)な大きさの球(たま)」に目を当て明るい日光の方角に向くと、はめ込まれた「小さな写真」が見え、それが「裸体の美人」だと記されていることだ。細君は「実に奇麗です事」と感心して苦沙弥をじらすが、この日常的だがおおらかさもある細君の姿は忘れられない。

 裸体像ではないが、自由の女神…

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