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 夏休み明けに増える子どもの自殺を防ごうと、呼びかけの輪が広がっている。居場所を開放したり、相談体制を充実させたりと、各地の団体が「駆け込み寺」に。「学校のほかにも居場所はあるよ」。そんなメッセージが一人でも多くの子どもに届くよう願っている。

 「学校がつらくてもココがあるよ!」。そう題したプロジェクトに取り組むのは、NPO法人「フリースクール全国ネットワーク」(東京)。全国各地の団体が8月末から9月にかけて設ける居場所や相談窓口のほか、不登校経験者のメッセージをホームページで発信している。

 きっかけは昨年、神奈川県鎌倉市図書館のツイッターの発信が共感を呼んだことだ。「学校が死ぬほどつらい子は図書館へ」。そんな内容が、半日で4万回以上リツイートされた。

 「以前は『いじめから逃げちゃだめ』といった反応が根強かったが、ある程度理解が進んできた」と、松島裕之事務局長は話す。

 NPO法人「全国不登校新聞社」も8月中旬、各地の取り組みを不登校新聞やウェブで紹介。昨年寄せられた樹木希林さん、東ちづるさんら著名人からのメッセージを載せた無料号外を、改めて発信している。不登校の経験がある石井志昂(しこう)編集長(34)は「当時は真っ暗で、将来どうなるのか不安だったが、今はそれなりに幸せに生きている。自分を大切にしてと伝えたい」と話す。

 一般財団法人「児童健全育成推進財団」は、「居るところがなかったら、児童館に行ってみよう」とツイッターなどで呼びかける。全国に約4600ある児童館を「居場所」として活用してもらおうと、昨年から定期的に続けてきた。「児童館は、誰かに評価されることもなく、普段の人間関係を引きずらない場所。必要な人に届くまで、息長く運動を続けていきたい」と担当者は話す。(仲村和代)

全国の団体が呼びかけ「勇気を出して、連絡して」

 いじめ問題の解決を支援するNPO法人「ユース・ガーディアン」(東京都目黒区)は23日、全国12団体に声をかけて「いじめ自殺防止のための共同宣言」を出し、ホームページで公開した。「学校に行きたくなかったら、行かなくても良い」「ちょっとだけ勇気を出して、連絡してほしい」と語りかける内容だ。

 代表理事の阿部泰尚(ひろたか)さん(39)の本業は探偵。十数年前から、保護者らの依頼を受けて学校でのいじめの証拠を集める調査も手がけ、いじめに苦しむ子どもたちを何人も見てきた。

 リストカットを繰り返す子がいた。ある中学生はいじめが深刻化し、学校帰りに行方が分からなくなった。線路脇にうずくまっているところを見つけ、助け出した。

 仕事とは切り離し、いじめや自殺をなくしたいと思うようになり、昨年「ユース・ガーディアン」を設立。いじめの調査のほか、電話相談にも応じている。夏休み明け前後は、相談が目立って増えるという。

 「学校以外にも逃げる場所があることを、苦しんでいる子どもたちに届けたい。どんな子も死なせたくない」と阿部さんは語る。(芳垣文子)

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「自分を大切に生きて」 石井志昂・不登校新聞社編集長(34)

 中学2年の2月、突然学校に行けなくなった。教師との関係やいじめなど、いろんなことが限界に達していた。先のことは何も考えられず、真っ暗な中に飛び込んでいく感じ。将来、どうなってしまうのかと不安だった。

 学校では、教師がすべての正解を握り、時には暴力でその答えを押しつけるようなことに疑問を感じた。大人になって思うと、学校の価値観の方が異常。「おかしいのでは」と疑問に思い、迷ったことの方が正しかったと思う。

 その後、フリースクールに行くようになり、不登校新聞の編集に関わって、同じ境遇の人たちに取材してきた。学校に行けなくなった時のことを、覚えていないという人も少なくない。それだけつらい経験だということだと思う。

 でも、私も、不登校だった友人たちも、大人になり、それなりに幸せに生きている。学校に行かなくても大丈夫。世界はもっと豊かで、楽しい場所。自分を大切に、生きていってほしいと伝えたい。

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 〈子どもの自殺〉 内閣府が昨年、過去約40年間の18歳以下の自殺を日付別に集計したところ、4月上旬や9月など、学校の長期休み明けに増える傾向があり、特に9月1日は突出していた。自殺対策白書では、10代前半は周囲に悟らせず自殺してしまう傾向があることから、微妙な変化を見逃さずにきめ細かな対応をすると共に、悩みを打ち明けやすい環境を作っていくことが重要と指摘している。