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 水面が迫り、自宅が音を立てて崩れる。濁流にのまれながら偶然ふれた柱にしがみつき、一晩を明かした――。入所者9人が死亡した岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」から数百メートルの場所で暮らす男性が、台風10号による被害の様子を取材に語った。

 佐々木達也さん(62)は8月30日夕方、自宅で強くなる風雨を気にしていた。

 午後5時ごろ、テレビで町内に避難準備情報が出ていることを知った。生まれ育った土地。これまで水害や地震の被害はほとんど受けたことがなく、「大変なことにはならない」と思っていた。

 ゴロゴロという雷鳴、稲光。次第に不安になってきた。午後6時すぎ、そばを流れる小本川の様子を2階から眺めていると、濁流が押し寄せてきた。すぐに1階に下りた。畳がプカプカと浮き、みるみるうちに1メートルほど浸水した。テレビなどの電化製品を持って2階に上がると、窓の外で2台の車が濁流に流されていた。数分後、自宅隣の木造の物置も流された。

 午後6時半ごろ、自宅がぐらぐらと揺れ、ミシミシという音が聞こえ始めた。「これは持たない。人生終わりだ」。流された時に体が浮きやすくなるのではと思い、マットレスを半分に切ってロープで腰に巻いた。直後、2階がベシャッと崩れ落ちた。思わず左腕の時計を見ると午後6時40分を指していた。

 泥水を3、4回飲んだ。流れに…

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