[PR]

「奇麗な着物を着た若い美しい女の人が立ってはるわ」

(呉服店を営んでいた夫が亡くなる直前、私に言った言葉)

 ある夏の夜でした。入院中の夫が突然、付き添っていた私に言いました。

 「この部屋の天井いっぱいに鳳凰(ほうおう)と菊の絵が描いてあって、奇麗な着物を着た若い美しい女の人が笑って立ってはるわ」

 どこにいるの?と驚いて聞く私に、夫は「もう何も見えへんわ」と答えました。

 女神さんがお迎えに来られたのだと私は思いました。

 そんな出来事があって間もなく、夫は静かに82年の人生の幕を閉じたのです。彼岸花咲く9月末のことでした。

 献身的に看護してくれた2人の娘と、見舞ってくれた孫たちにみとられて、何も思い残すことはなかったと思います。

 安らかで美しい死に顔。左の目から一筋の涙がこぼれたのを、忘れることができません。

 あなた! 天国で美しい女神さんに会えましたか? 何代も続く呉服店主として生きてきた証しに、一番上等な着物をプレゼントして、楽しく過ごしておられるのでしょうね。

 私も間もなくそちらへ参ります。できれば、あなたも逝った彼岸花咲く頃に参りたいと思います。

◆奈良県 村上和子(86)

     ◇

 あなたにとっての介護の記憶を、ぜひお聞かせください。ご投稿いただく際は、お名前とご連絡先(住所・電話番号・メールアドレス)をご明記のうえ、メールでお送りください。文字数の制限や締め切りはありません。匿名をご希望の方は、その旨をお書き添えください。掲載にあたり、ご投稿について記者がお話をお聞きする場合があります。

 朝日新聞文化くらし報道部「介護 あのとき、あの言葉」係

 kaigotoukou@asahi.comメールする