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 「私だけが生き残ってしまった」。岩手県岩泉町袰綿(ほろわた)の馬立恵喜(えき)さん(69)は頭に巻いたタオルで目元の涙をぬぐった。

 8月30日午後6時前、恵喜さんは夫の保治さん(78)と飼育している牛の様子を見るために自宅前の小屋に向かった。

 川そばに立つ自宅を出るとすぐに胸下まで水につかってしまった。足元がふらつき始めたため、2人は流されないように持っていたタオルで手首と手首を結んだ。

 しかし「水の力が強くてタオルがほどけて流されてしまった」。恵喜さんはその瞬間を振り返る。「私も流されて水を飲んで、夫が見えなくなってしまった。どうすることもできなかった」。数メートル流されたものの運良く木にしがみつくことができた。

 流された保治さんは3日昼現在、まだ見つかっていないという。「体だけでも早く見つかって欲しい」と話していた。(竹花徹朗