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「そろそろ逝くから……。お正月はいつも通り迎えるように」

(父が自宅で亡くなる直前に言った言葉)

 「自宅で自然死を迎えたいから、よろしくお願いしたい」と、入院中だった父から話がありました。以前から自分の最期について考えていた父は、すでに手紙で自宅近くの主治医に往診を依頼しており、覚悟の退院だと感じました。

 退院後はベッドで大好きな読書や同居の孫娘との会話を楽しみ、父の入れ歯や手足の洗浄には家族全員が関わりました。家族が一体となった楽しい日々でした。

 退院して1カ月経った朝、父が言いました。「そろそろ逝くから……。生まれたらいつか、遅かれ早かれみんな死ぬんだから、特別悲しむことはない。お正月はいつも通り迎えるように。じいちゃんはいつもこの部屋にいるから……」。そのまま静かに亡くなりました。自然でした。

 亡くなった後のことについて、父は「ただ身内や知人など親しく心をかわす人々だけの会合で、私の生前のあれこれを語り合い追憶の悪口でも言い合ってもらえれば何よりの供養となりそれで十分」と書き残していました。私たちは父の希望にそって、身近な人たちで集まってお線香をあげ、お経の代わりに父が好きだった音楽を流して見送りました。そして、遺志の通りに献体しました。

 その後生きていく私たちに、父は逝き方をみせてくれました。20年前の体験です。

◆茨城県 佐山栄子さん 65歳

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 朝日新聞文化くらし報道部「介護 あのとき、あの言葉」係

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