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 東京電力福島第一原発事故当時18歳以下の福島県民を対象にした甲状腺検査で、1巡目検査(先行検査)を受けた約30万人の甲状腺がんの有病率と、外部被曝(ひばく)の推計量には関連がみられなかったとする論文を福島県立医科大のグループが発表した。グループの大平哲也・同大教授(疫学)は「現時点で事故による被曝と甲状腺がんの関係は見いだせなかったが、今後も調査を続ける必要がある」としている。

 対象にしたのは、2011年10月~15年6月に1巡目検査を受けた30万476人で、112人ががんかがんの疑いと診断された。

 被曝には、外から放射線を浴びる外部被曝と、放射性物質を体内に取り込んで起きる内部被曝がある。今回は県民健康調査に基づく外部被曝量の推計をもとに、県内市町村を①5ミリシーベルト以上の人が1%以上②1ミリシーベルト以下の人が99・9%以上③それ以外、の三つに分け、甲状腺がんが見つかった割合(有病率)を算出した。その結果、最も推計被曝量の高い①は10万人当たり48人、最も低い②は同41人、その中間の③は同36人で、違いはみられなかった。内部被曝が考慮された世界保健機関(WHO)による推計に基づいて市町村を分類して調べても、関連性はなかったという。

 さらに検査を受けた30万476人のうち、外部被曝量が推計できる約13万人について、被曝量と有病率の関係を調べたが、関連はみられなかった。

 県民健康調査検討委員会では、甲状腺がんの発生について「放射線の影響とは考えにくい」との見解を示している。同委員会の星北斗座長(福島県医師会副会長)は「論文をまだ精査していない」とした上で、「これだけで決着するようなものでなく、判断の材料の一つだと考える。しっかりとした研究だと思うので、注目していきたい」と話している。

 論文は2日、米医学誌「メディシン」電子版に掲載された。(奥村輝)