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 食品ロスは、生産から消費の各段階に出ます。減らそうという努力は、各段階で始まっています。それでも出てくるものについては、飼料や肥料などにリサイクルする方法もあります。アンケートでは、小売り、消費者の取り組み、それに国の関与を求める意見が多くありました。一歩前に進むには、いま何が必要なのでしょうか。

 食べ残しが作法と言われた中華料理の店が、食品ロスに取り組んでいます。横浜中華街を訪ねました。

 年間10万を超える客を迎えるという大珍楼新館。求めに応じ一皿の量を少なくし、食べ残しを持ち帰る「ドギーバッグ」を勧めています。支配人の栗原義徳さんは「食べきれない量を出すのが礼儀。食べきるのは失礼。そういう中国文化はありますが、お客様のため、そして経費を考えて食品ロス対策に取り組んでいます」。

 少量提供の背景には、大人数でテーブルを囲む光景が少なくなってきたことがあります。2人連れが増え、昔ながらの一皿だと2、3品で十分です。「エビチリ、チャーハン、マーボーで終わり、です。お客様ももの足りないし、こちらも中華料理をもっと知ってほしい」

 持ち帰りは、場の雰囲気次第。式次第のあるような宴席ではやりにくいですが、アットホームなテーブルには、衛生上可能と判断できる範囲で、「持ち帰れますよ」とプラスチック容器を用意します。「おなかいっぱいだが、ほかにもっと食べたかった」「夕食をつくる手間が減る」と喜ぶ客が圧倒的だそうです。

 店は、捨てる量を減らせるとともに、食後の片付けにかかる時間や手間という人的コストを省けます。同店は、横浜市が食品ロス対策として2012年に始めた「食べきり協力店」事業に参加しています。市によると、中華街では「文化になじまない」と渋る店もあるそうで、大珍楼は少数派です。ただ、同店の取り組みは市の事業以前からだそう。栗原さんは、「行政がやろうというからではなく、店に利益があるからやっています」と強調しました。(村上研志)

 京都市は2014年から「食べ残しゼロ推進店舗」の認定制度を始めました。市内の飲食店と宿泊施設が対象で、今年7月末時点で257店舗が認定されています。「食材を使い切る工夫」「食べ残しを出さない工夫」といった取り組みの中から2項目以上を満たすことが条件。認定を受けると、店の情報や取り組みが市のホームページに掲載されます。

 認定を受けた京料理の老舗「六盛(ろくせい)」を訪ねました。約300席ある店は、食材を使い切る工夫として「食材の無駄が出ないように仕入れている」「魚のあらや骨、野菜の皮などを利用したメニューの提供」「余った食材をスープやパテ、スタッフのまかない料理に利用」といった取り組みをしています。

 調理場で、その様子も見せてもらいました。まな板の上に置かれたハモは、頭と尾のついた身と、中骨、腹骨に分け、中骨と腹骨は客に提供する揚げ物に。ハモが大きく、中骨が太い時には、まかないの汁物に入れるそうです。

 六盛の堀場弘之会長は「京料理は食材に感謝し、残さず食べることが基本。特に魚は、肝はつくだ煮にもなる。食べられないところはほとんどない」と話します。

 最近は、会席などのコース料理の量を、客の好みに応じて減らすことが多いといいます。「高齢の方のなかには、量は食べられないので、少なくして良い素材を使ってほしいという声も多い」そうです。

 六盛では昨年度、食べ残しや調理くず、魚あらなども含めた生ごみが約42.5トンあったそうですが、今年度は、2トンほど減らすことを目指しています。(浜田知宏)

 スーパーやコンビニエンスストアで売れ残った食品はどこに行くのでしょうか?

 コンビニ大手のローソン。昼下がりに東京都内の店舗で、商品を棚から撤去していました。同社によると、消費期限の3時間前をめどに下げます。持ち帰って食べるまでの時間を見込んでいるのだそうです。ローソンで出る売れ残り食品は1店舗1日あたり7.8キロ(2015年度)。全国で年3万6千トンになります。

 売れ残りを減らすのに大事なのは正確な需要予測。同社は店ごとに過去の実績や天気などを分析して精度を高めています。消費期限が迫った商品を値引きする店もありますが、「24時間営業では、スーパーのように閉店前に売り切ることができず、値引きシールを貼る負担も重い」(同社)。売れ残りをゼロにするのは難しそうです。

 千葉県市川市の食品リサイクル会社、農業技術マーケティング(伊藤秀幸社長)には、都内や千葉県内のローソン約450店舗で売れ残った弁当やおにぎり、サンドイッチがトラックで次々と運ばれてきます。消費期限前や切れたばかりのものです。「未利用資源で廃棄物ではありません」と野呂重之副社長は言います。

 基本的には手つかずの食品ですが、たまに缶や割り箸などが混じるので手で除きます。ほかはベルトで分別機に運ばれて、プラスチック容器とミンチ状になった食品残渣(ざんさ)に分けられます。残渣を乾燥機に入れると、さらさらの粒に。ふるいにかけて細かいプラスチックなどを取り除きます。飼料メーカーが配合して、養鶏用の飼料が出来上がります。

 飼料は千葉県内の養鶏場で使われます。卵は「エコで育った千葉のたまご」という名前で、千葉県と茨城県の一部のローソンで売られます。

 ローソンは全国約1万3千店の2割で売れ残り食品のリサイクルに取り組み、年8千トンが再生利用されているそうです。ただ、地域によってはリサイクル業者が少ないので、全国に広げるのは難しいといいます。

 スーパーやコンビニの食品ロスなどを利用して野菜や食肉を生産し、排出した店舗などで販売することを、「リサイクルループ(輪)」と呼びます。食品リサイクル法でループと認定されたのは、これまでに54事業あります。

 コンビニ大手のファミリーマートの都内など500店舗から出る食品残渣は液体飼料になり、その飼料で育てられた豚が、同社の弁当のおかずになります。スターバックスコーヒージャパンのコーヒーの豆かすは飼料や肥料にされ、とれた牛乳や野菜は店の乳製品やサンドイッチになります。イオン、ユニーなどのスーパーも、食品ロスを飼料化したり肥料化したりし、これを用いて生産された豚肉や野菜を自分たちの店で販売しています。

 食品リサイクル実施率は製造業95%、卸売業57%、小売業46%、外食産業24%と、加工が進んで私たちのテーブルに近くなるほど低くなっていきます。(今村尚徳、編集委員・石井徹)

アンケートに寄せられた声は

 食品ロスをなくすには。アンケートの声の抜粋です。

●「すぐに使う物でも賞味期限が長い商品を選ぶ傾向にあることも現実です。食品ロスを非難するよりも先に自分の行動を見つめなおしてほしいです。せめてすぐ使いきってしまう商品については、期限の短い商品を選ぶ心がけをしてもらえばいいですね」(福岡県・30代男性)

●「残りものを持ち帰ることを恥ずかしいと考えるのは日本独自の文化ではないかと思いますが、この認識を変えていくことが必要だと思います。飲食店側が積極的に『お持ち帰り』文化を定着させてはどうでしょうか?」(海外・40代女性)

●「流通における食品ロスの最も効果的で最良の解決法は、半額以下の価格での値引き販売である。日常的に期限の短い食品が半額以下で買えるなら、特売で買いだめもしなくて済むし、流通在庫の返品、廃棄も減る」(京都府・30代男性)

●「ごみの分別収集も、自治体レベルでの取り組みがあってはじめて実現した。同じく、食品ロスの問題も、個々人レベルでの問題意識はすでにあるので、国、自治体が仕組みをつくると解決に動き出すと期待します」(東京都・60代女性)

●「最も必要なこと=最も足りていないことは、消費者意識だと思います。具体的には、食べられる時期を判断する能力を取り戻すことと、食べたいものがいつでも好きなだけ手に入る自由をあきらめることです。この二つがゆがんでしまった結果が食品ロスだと思います。どちらも食育推進で解決に近づくのではないでしょうか」(福岡県・30代女性)

社会経済システム、どんな変革が可能なのか

 「食品ロスが減っても飢餓に苦しむ人の食料が増えるわけではない」という声を聞きます。でも、国連食糧農業機関(FAO)は、食品ロスが世界的な食料の減少や価格の高騰につながることを懸念しています。満足に食べられない人は国内にもいます。

 食品ロスの削減に反対する人はいません。そういう問題こそ個人の心がけや善意だけでは解決しないように感じます。米国や韓国にはフードバンクの活用を促進する法律があり、フランスは食べられる食品を捨てることを法律で禁じました。私たちにはどんな社会経済システムの変革が可能なのか、消費者を含めて突き詰める必要がありそうです。(石井徹)

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 ◆ほかに神田明美、斎藤健一郎、服部誠一、吉沢龍彦が担当しました。

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