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 がんを告知された患者やその家族らがふらっと立ち寄り、無料で相談できる施設「マギーズ東京」が東京都江東区に完成した。英国の施設をモデルに寄付でつくられ、10日にオープンする。運営を担うNPO法人の共同代表は、がんで人生が変わった2人の女性。「病院でも自宅でもない『居場所』をつくりたい」という思いが実を結んだ。

 訪問看護師の草分けである秋山正子さん(66)は24年前から在宅ケアにかかわる。肝臓がんだった2歳上の姉が自宅で終末期を過ごしたことがきっかけだった。みとりなどの訪問看護の際、患者は「もっと話を聞いてほしかった」と言う。胸が痛んだ。そんなとき、乳がんで逝った女性造園家の名を冠した英国の「マギーズセンター」を知った。

 第1号は1996年に誕生。次々に寄付が集まり、有名建築家が設計した施設が、いまは約20カ所に増えた。白衣を着ない医療スタッフが友人のように寄り添い、訪問者は病院では言えなかった悩みを口にする。その実践に共感した秋山さんは、2009年に現地を視察。こんな施設を日本にもつくろうと決意した。

 14年春、秋山さんを訪ねてきたのが日本テレビ記者の鈴木美穂さん(32)だった。24歳で乳がんになり、闘病中に同じ世代と出会えず孤立して「死の恐怖にとらわれた」という。職場復帰後、若年性がん患者の思いを載せたフリーペーパーを発行したり、患者向けにヨガや書道などの教室を催したりしていた。秋山さんの思いを知り、「一緒につくろう」と持ちかけた。

 鈴木さんは20年まで無償で使える用地を確保。江東区豊洲の埋め立て地にあり、半径数キロ以内に五つのがん拠点病院が入る。クラウドファンディングで目標額を700万円に設定して建設費用などを募ると、2カ月で約2200万円を突破。支援の輪は広がり、7千万円以上の寄付金が集まった。イベントなどを通してかかわったボランティアは、延べ3千人を超えた。

 完成したのは木造平屋建ての2棟計約200平方メートル。英国の施設同様、大きな窓から自然光が差し込み、緑豊かな庭が眺められる。障子で個室に仕切れる空間もある。当面は平日午前10時から午後4時まで看護師と臨床心理士の2人が常駐。訪問者の相談に乗り、お茶を飲むだけでも歓迎する。

 「言葉にできない不安や悩みも聴く。生きる力を取り戻してほしい」と秋山さん。鈴木さんは「イベントも開いてがんでない人も巻き込み、新たなボランティア文化を根付かせたい」と意気込む。

 オープニングフェスティバルは10日午後2時半から開かれ、11日夜には英国マギーズセンター関係者による記念講演会がある。詳しくはNPO法人「マギーズ東京」のホームページ(http://maggiestokyo.org/別ウインドウで開きます)で。(高橋美佐子)