[PR]

 高付加価値品へのシフトを進め、低価格品から撤退してきた日本の製造業のこれまでの戦いぶりとは正反対の戦略をとる会社があります。ファスナーのトップ企業、YKKです。価格の安い新興国向け、中級品向けの市場にあえて挑戦しています。吉田忠裕会長は「どんどん膨らむ市場を追いかけない選択肢はない」と断言します。

 金色や銀色の数種類のファスナーがテーブルに並んだ。ジーンズの、いわゆる「社会の窓」向けだ。場所はインド・ムンバイ。昨秋、ファスナー大手のYKKで金属ファスナーを開発している見角(みかど)幸一さん(43)が市場調査で訪れた。

 「どのファスナーがいいと思いますか」。現地の縫製会社幹部に尋ねると、「ゴールドです」と即答。インド人幹部は金色を手にした。デリーでも同じ反応だった。金色でないとインドでは売れないのだ。

 インドに持ち込んだファスナーはYKKが2018年度からインド市場に投入する戦略商品だった。

 新しいファスナーは銅亜鉛合金とは違う、安くて新しい素材でつくった。強度を保つため、かみ合わせ部分の形状を工夫した。

 ジーンズに使われるファスナーは従来、銅と亜鉛の合金で「ゴールド」だ。一方、新素材の色は銀色。金色にするには着色処理が必要で価格は高くなる。安くするには製造工程でコスト削減が迫られる。見角さんの仕事がまた増えた。

 成長が著しいインドでジーンズ需要が膨らんでいる。売れ筋は1本約1千円。月収1万~2万円の中間層には高価な買い物だ。しかし、そのファスナーは壊れやすい。インドにはファスナーの修理専門店があるという。

 ファスナー業界で世界シェア約20%といわれるYKK。インドでも「ファスナーはYKK」と評価された時代もあったが、内需用ジーンズのシェアはゼロ。YKK製はインド製の2倍の価格で市場に食い込めなかった。YKKは18年に、「壊れにくくて安い」戦略商品を投入し、シェアを奪っていく考えだ。

 高付加価値品(ハイエンド)にシフトを進め、低価格品から撤退してきた日本の製造業のこれまでの戦いぶりとは正反対の戦略だ。

 シェア奪還への取り組みはかばん用のファスナーでも始まっている。14年1月、富山県の黒部事業所でかばん用ファスナーを開発する鶴谷明純さん(41)は、本社のある東京・秋葉原に呼ばれた。猿丸雅之社長との会議だった。

 「中級品のかばん向けに競争力…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら