【動画】美容家の佐伯チズさん=瀬戸口翼撮影
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 美容家の佐伯チズさん(73)が11月3日、東京都内で開かれる「きょうもキレイ・スペシャルトーク」で講演します。佐伯さんは60歳代でエステティックサロンを開業し、いまも日本各地を飛び回って精力的に活動しています。そんな佐伯さんを支えてきたものは何だったのか、歳を重ねても元気にきれいでいるためにはどうすればいいのか。お話を聞きました。

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――お肌が透き通るように白いですね。佐伯さんがきれいでいるために、心がけていることは何ですか?

 一番大事なのは食べることです。旬のものをしっかりいただき、五臓六腑(ごぞうろっぷ)に元気を送り込みます。食べたものが血となり肉となり、皮膚まで栄養分が届くから、元気でいられる。だけど、加齢で足りなくなるものがあるから化粧品で補う。二つめは、その食べ物をよくかむこと。三つめは意識すること。「このお漬物きれいねぇ」とか、五感で意識するだけで生き方も違ってきます。

 四つめは両手を使うこと。シンメトリー、つまり左右同じように動かして、右脳と左脳を使う。そして五つめ、続けてください。これが5原則。

 健康でいられるかどうかは生き方次第。しみができてから言うより、できないようにする生き方が大切なんです。美容論は人生論です。その人の人生は全部顔に出ますから。

――子どもの頃はコンプレックスが強かったそうですが。

 コンプレックスだらけでした。中学生の頃は浅黒くて、目は仏さんみたいに細かったし、そばかすだらけ。

 ティアラをつけたオードリー・ヘプバーンを見て、「世の中にはこんなに顔中目だらけの人がいるんだ。口いっぱい笑ってきれいな歯を出して、口紅が真っ赤できれい」と思って。それまでの私は男の子とばかり遊んで、けんかして泣かしたりしていましたけど、「こんなことしている場合じゃない。私はオードリー・ヘプバーンになる!」と決めました。

 ブラウスをカットしてハンカチみたいに結んだり、サブリナパンツのように切ってまつったり。梅田のドラッグストアで、ひじやかかとの角質を取るものを見つけて、そばかすを取ろうとしました。ひじ以外は使うなって書いてありましたけど、そんなもの知ったこっちゃない。私は成長期だったから何をやっても大丈夫だったけど、そんなむちゃなことはやらない方がいいですよ。それに代わるものを、私は教えているんです。

――若い頃は猛烈に働いていたと聞きました。

 私は朝8時には会社に行って、夜中の2時3時までずっと働いていました。やることが多くて、有給休暇を使ったことがないし、正月も休んだことなんてない。

 だけど、やれることがある感謝。ちゃんと食べて、つけた化粧はとって、自分の体をコントロールしていたから、今の自分があるんじゃないですか。57歳と62歳で突発性難聴になったぐらいで、更年期障害以外は血圧も数値は正常です。寝不足だったら昼間に1時間眠ればいい。

――そこまで頑張ることができたのはどうしてですか?

 全うしたかったからですよ。60歳の定年までは何としてもがんばらなきゃと。

 当時は専業主婦が当たり前の時代でしたから、結婚したら家庭に入る人が多かった。20代で働き始めた頃、主人に言われたんです。言い訳だとか手伝ってとか言わないで、家の中のことを完璧にやって世の中の役に立って、60歳まで仕事を全うする気構えがあるなら勤めなさいって。

 私が続けてこられたのは、自分がやりたいことをやるけれど、主人に迷惑はかけないようにしてきたからだと思うんです。あの時代に、私を働かせてくれた主人と結婚できたというのは幸せなこと。私は主人をものすごく大事にしましたしね。

――ご主人のことをとても愛していらしたんですね。

 もういっぺん生まれ変わっても主人と一緒に人生を続けたいです。10歳も離れていて優しかったですし、どこに行くにも一緒でした。テレビのCMで食器用洗剤の「チャーミーグリーン」ってありましたでしょ。おじいちゃんとおばあちゃんが手をつないで坂道を歩く。こういう夫婦になろうね、と言っていました。

 車を運転していて、私の体が前に行かないように、私の胸のところにそっと手を当てて押さえて、優しくブレーキを踏むんです。もう、よけい好きになりましたよ。

――そのご主人は52歳の若さで亡くなりました。佐伯さんは42歳でした。

 がんと診断されてから2年でした。いままで元気だったのに、目の前からいなくなるなんて信じられなくて、亡くなってからは毎日泣き暮らしました。主人の服を着て、主人の食器を使って、家中に写真を貼りました。

 1年間、じっとお骨の前でうつむいて骨ばっかり食べていたんです。体の中に全部入れて、自分の骨にしたいと……。

 一周忌が過ぎたころ、友だちに「おばあさんみたいな顔をしている。ご主人は、あなたがきれいでいることを好きだと言っていたんだから、元に戻らなきゃダメだよ」と言われて、鏡を見たら、くすんだ顔で目は腫れっぱなし。「化粧しないでそのままがいいよ」と主人が言ってくれていた頃のような生活に戻ろう。そう一念発起して、ローションパックをまた始めました。

 主人が亡くなってから3年目、私が45歳のときに、昔の同僚が声をかけてくれて、仕事に復帰したんです。

――顧客の借金をかぶったり、指を切断しかけたり、会社で肩たたきにあったりと、いくつもの試練に直面したと聞いています。

 体のストレスは寝ればいい、頭のストレスは笑えばいいと思っています。

 職場でよく「食べに行こう」「飲みに行こう」って言うじゃないですか。私は「ごめん」って参加しませんでした。女は足を引っ張って、手を引っ張ってくれない。上役はみんな男で、女はこびる。見ていて嫌でした。

 二十歳の頃から、先輩にいじめられたときは、銀座を端から端まで見て歩きました。デパートや紀伊国屋、丸善に行くのがストレスの第一の発散方法。第二の発散方法は、住宅展示場。浜松町にあって夏は夜遅くまでやっていたので、会社が終わってからよく行きました。かわいいグッズをくれるんですよ。ごっつい重たいパンフレットもいただきましたけど。

 おつきあいできる人とは、とことんおつきあいすればいい。ギブ・アンド・テイクじゃなくて、一方的でいいんです。私、主人にもギブで愛情を注いだの。黙っててくれればいいから、チューするわねって。男の人は「チューして」って言ってもしてくれないでしょ。私、「くれない族」はやめようって思ったの。

 「してくれない?」「連れてってくれない?」は言わない。「してあげる」「連れてってあげる」と言えば男の人は喜ぶじゃないですか。してもらわなくてもいいんです。「してあげたのに、と思うならやめとけ」とおじいちゃんに言われましたから。(聞き手・坂本真子)

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 さえき・ちず 1943年生まれ。美容家(美肌顔師)、成安造形大学客員教授、生活アドバイザー、カウンセラー、エッセイスト、映画コメンテーター。フランス化粧品メーカーを定年退職後、2003年からエステティックサロン「サロン ドール マ・ボーテ」を主宰。美容、食文化や生き方指南において、女性だけでなく多くの男性からも支持されている。講演や執筆活動、テレビ・ラジオ出演の一方、現在もお肌の悩み相談やお手入れの指導を続けている。

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「きょうもキレイ・スペシャルトーク」

◇開催日時:11月3日(木・祝) 13~16時 (12時半開場)

◇場所:ハイアットリージェンシー東京(東京都新宿区西新宿2の7の2)

◇募集定員:500人

◇参加費 :4000円(朝日新聞デジタル会員、朝日新聞購読者〈2カ月以上〉、朝日カルチャーセンター会員は3500円)

◇申込先

 〈web〉http://eventregist.com/e/kirei2016別ウインドウで開きます

 〈電話〉朝日カルチャーセンター・プロジェクト事業本部(03・3344・2041、10時半~18時半、日・祝日を除く)※コンビニ決済のみとなります。

◇主催:朝日新聞社Reライフプロジェクト

◇協力:小田急電鉄、アトラ50(http://atora50.com/別ウインドウで開きます