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 活断層が甚大な被害をもたらした熊本地震。市街地の住宅などが地盤ごと壊れた熊本県益城町では、半年がたった今も、住民が「ここに住んでいいのか」という根本的な疑問に悩まされている。全国にある活断層は約2千とも言われる。足元に潜むリスクにどう向き合えばいいのか。

 「この道はもともと、ほぼ直線だったんですよ」

 熊本県益城町の堂園地区に住む田上勝志さん(50)が指さす先の道路は、大きく左に曲がっていた。活断層の横ずれで、その先の土地がまるごと動いた結果だ。道路脇の水路もそこで分断され、1メートルほど横にずれて再び延びている。

 近くの川の名が付く「布田川(ふたがわ)断層帯」の存在を住民は幼い頃から耳にするが、田上さんは「あんな地震は想像しなかった」と言う。4月16日未明、自宅は崩れ落ち、妻と2人で下敷きに。妻は重傷を負い、地区では1人が亡くなった。

 真っ二つに裂けた田上さんの麦畑は地震の脅威の象徴として繰り返し報じられた。調査に入った京都大の林愛明教授(57)=地震地質学=らが6月下旬、畑で住民説明会を開いた。激しい横ずれや、約1千年前の縦ずれの痕跡。「こんな断層があるとこに家ば建てていいんですか」。田上さんは教授に近づいて問うた。答えは「断層の上には建てない方がいい」だった。

 断層は見えている。ならばこれを避け、地区を一から作り直そう――。田上さんは「みんなでまとまって区画整理をお願いしよう」と地区の若い世代を中心に声をかけて回る。「何もしなければ出て行く人がいるかもしれない」と焦る。

 堂園地区から車で約10分のところにある町の中心部、宮園地区。道は激しくゆがみ、住宅約250戸の多くは崩壊したまま手つかずで残る。こちらは活断層が地表に現れていない。既知の布田川断層帯から枝分かれした断層が宮園地区の直下へ延びていると研究者たちはみているが、実際にどの家の下を通っているかはわからない。軟弱な地盤が影響した可能性もある。

 8月初旬、地区内の隣接する10世帯ほどが熊本市内の飲食店に集まり今後を話し合った。「もう住める所じゃない」。そんな声が多くあがった。ただ、誰にも判断できる情報はない。9月、再び集まると、今度は「住みたい」が多かった。

 「時間が経つにつれ、住めるもんなら住みたいとの気持ちが強くなった」。家が全壊し、熊本市のアパートで暮らす川越力男さん(79)の心は揺れる。「断層の上に住み続けていいのか、町が示してほしい」

 同じく家が全壊し熊本市内のマンションで暮らす岡元正樹さん(67)も「戻るか決めかねている」と吐露する。土地の評価額は地震後、半分近くに下がった。それでも戻りたい。しかし。「近所の人がどれほど戻るのか。住民が歯抜けになった所に帰って幸せなのか」。迷いは尽きない。

 益城町は建物の98%以上が被災した。町が8月から実施した住民調査では、回答した5千以上の世帯の1割近くが町外転居を考えていた。町に住むかどうかの判断で重視することは「地震・断層からの安全性の確保」が一番多かった。

 地震から半年を前にした今月12日、町は復興計画の骨子を決定した。宮園地区などの市街地を引き続き町の中心とする一方、移転希望の住民の受け皿になる新たな拠点を、布田川断層帯から遠く、被害が少なかった町西部に設ける構想だ。

 ただ、地盤が壊れた市街地をどう再生させるかは、白紙だ。西村博則町長(60)は言う。「絶対安全とか、ここには住めない、と断言するのは難しい。しかし、いずれ何らかの決断が必要になる」

■断層を避ける街づくり、先…

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