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 2008年の夏、経済連携協定(EPA)による看護師・介護福祉士候補者約200人が初めて日本に出発するのをインドネシアで取材した。「日本で勉強して祖国の発展に役立ちたい」と夢を語る候補者たちは、「英雄」として送り出された。

 あれから8年。たびたび会っては近況を聞いてきた。必死で勉強し、難関の国家試験に合格した人も多かった。この間、EPAの対象は3カ国に広がり、現在まで4千人近くが来日して600人以上が国家試験に合格している。ところが、最近は合格者から「帰国したい」と聞くことが増えた。実際、約3割が帰国などでEPAの仕組みを離れていた。なぜなのか。国は帰国の理由は施設からの任意の報告に任せ、「結婚や家族の事情が大半」としている。

 これまでEPAの制度は日本語の難しさなど試験を受けるまでの大変さばかりに焦点が当たってきた。合格後は日本で働き続けられるが、その後のフォローはなかった。しかし合格者たちは「合格後がさらに大変だ」と口をそろえる。合格した途端に国の助成金がなくなり、学習支援もないまま「日本人と同等」の仕事を求められる。疲れ果てた介護福祉士や、多忙さに子育ての難しさを感じる看護師が思いを語ってくれた。

 仕事が忙しいのは、みな同じ――。そう強いられる社会の中で、日本人は暮らしている。でも、私たちが普通と思い込んでいる制度や働き方にこそ問題があるのではないか。合格者たちの挫折は、そう突きつけていると感じた。

 EPAで来日する外国人は、金を稼いで帰ることが目的の「出稼ぎ労働者」ではない。看護師候補者なら母国で看護学校を出て看護師として数年働き、介護福祉士なら高等教育機関卒業という条件を満たすエリートで、高い志を持っている。彼らの声を聞き、生きづらさに向き合えば、日本人が当然だと思っている社会を見直すことにもつながる。

 8月に帰国した介護福祉士のイ…

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