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 紅葉が楽しみな秋の山歩き。夏山に比べて水分補給がおろそかになりがちですが、それでは事故やケガを招きかねません。水分のとり方のコツを専門家に聞きました。

 人間の身体は、約60%が水分で占められている。汗や尿、肌からの水分喪失のバランスが悪くなると、水分の補給と、脱水症状が起きる。

 脱水の主な症状として全身のだるさが知られるが、そのほかに、足がつりやすく転びやすくなるため、事故やケガの引き金にもなる。札幌医科大の當瀬規嗣(とうせのりつぐ)教授(生理学)は「体内の水分に溶けているナトリウムやカリウムなどの電解質が汗や尿で失われ、筋肉の収縮や神経の伝達がうまくできなくなった状態です」という。

 マラソンで転倒する人には脱水が関係している可能性がある。「脱水に気づいたときになって、あわてて水を飲んでもすぐには回復はのぞめません」と當瀬さん。脱水が重くなると血液が濃縮されて血栓が作られやすくなり、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞のリスクも高まる。

 運動量が多く、水がどこでも自由に手に入らない山歩きでは、普段以上に脱水に注意が必要だ。国際山岳医の資格を日本人で初めて取得し、登山外来を開設する心臓血管センター北海道大野病院(札幌市)の大城和恵医師は、一昨年から7~9月の北アルプスでの山岳遭難の分析を進めている。傾向として発病(心臓疾患や高山病、熱中症など)や疲労(体調不良)による救助要請の7~8割は、脱水が一因と考えられるという。

 「山では、汗をかいたり呼吸も大きくなったりで体から水分が抜ける。秋でも、脱水になりやすい環境です」

 水を飲んでいれば避けられた救助要請は相当ある、と大城さんはみる。「30分に1回、200ミリリットル」が目安だ。

 トイレ環境が整っていない山では、同行者への遠慮も手伝って、水分補給を控える女性が少なくない。「飲んで出す、の循環が大切。普段と同じ回数を意識し、汗の分も考慮して水分を取ってほしい」と大城さん。(熊井洋美)