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 入札方式を導入する。市内の学校が制服のデザインを統一する。新規業者が参入しやすくする。制服導入までのしがらみを変える動きについて昨日、考えました。きょうは「もったいない」の気持ちを生かし、制服を再利用する試みを見てみます。アンケートに寄せられた「10代の解決策」、そして購買の専門家の見方も紹介します。

成長に合わせ借り換え

 「3度の転校で3回変わった制服。最後の学校は卒業まで5カ月なのに制服の買い替えを強要された」(福岡・40代)、「子供の通う中学校では全員ジャージー登校が普通。こんなに着ないのに、高い金額で購入しなければならず本当に腹立たしい」(神奈川・50代)。

 アンケートに寄せられた声です。

 帯広市を中心とする北海道十勝地方では、多くの中学生が、行事やテスト期間を除き、制服ではなくジャージーで登下校しています。そんな中、レンタル店「ぎゃくし」は2003年、制服のレンタルを始めました。

 十勝地方のおよそ50校の制服1万着を取りそろえています。レンタル期間と料金は、制服上下で1日(2200円)から18カ月(1万2800円)まで。成長に合わせて毎年、借り換える生徒が多いそうです。

 常務の瘧師(ぎゃくし)博一さん(41)によると33年前、小中学校でスケートの授業がある同地方の家庭向けに、スケート靴のレンタルを開始。やがて、利用者から「制服も」と求める声が寄せられるようになったそうです。

 中古品を200着ほど買い取り、開始。いまは年間1500着ほど貸し出しています。瘧師さんは「買いそろえれば4万円ほど。買い替えが1回でも計8万円かかる。レンタルなら、ちょうど良いサイズを3回借りても3万円余りで済み、子どもの多い家庭や転勤族の方からは特に重宝がられているようです」と話します。

中古をリサイクル 安価で販売

 栃木県足利市の「足利市くらしの会」が1996年に始めたのは、「制服リサイクルバンク」です。

 東武鉄道・足利市駅前のビル1階。市が無償提供する40平方メートル足らずの一室に、市内各地の中学・高校の制服約1600点が所狭しと並べられています。詰め襟、ズボン、セーラー服、ブレザー、スカートなどは500~千円ほど、ワイシャツやブラウスは100~500円ほど。同会の会員がボランティアで運営しています。

 同会が95年に実施した、ごみに関する市民500人の実態調査で、半数近くが「不要になった衣類は捨てる」と答えたことがきっかけでした。なかでも制服は、着られる状態のものが捨てられていて、「中古制服を安く買えるならぜひ利用したい」という声も多いことが判明。そこで、中古制服の提供を呼びかけ、リサイクルバンクを始めました。

 これまでに約2万3千着が寄せられ、1万8500着を販売。当初は成長してきつくなった制服の買い替えで利用するケースが大半でしたが、ここ数年は「1着目」を買いに来るケースもあるそうです。

 中島功枝(かつえ)会長(68)によると、視察に訪れる他の自治体では場所の確保がネックになるようです。足利では行政の後押しに加え、多くの学校が長年デザインを変えていないことや、学校が転入生に利用を勧めるなどバンクの存在が浸透していることも、20年続いた要因のようです。(三島あずさ)

価格交渉、複数の学校で

 「言い値じゃない買い方ってあるでしょうか」。教職員の声を集めた9日付のフォーラム面で紹介した中学校長の言葉です。中央省庁や企業の購買改革に携わってきた製薬会社の購買担当、小室勝裕さん(44)に、方法を聞きました。

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 どんな方法をとるにせよ、状況を変えられるのは買い手だけです。買い手は、有利に交渉を進めるための情報がもともと不足し、高値買いになりやすい。でも、制服選定の段取りの工夫でそれは変えられます。

 学生服製造業者の決算報告によると、業界大手でも売上高に対する営業利益率は約5%と、決して高くはありません。1学年100人の中学で5万円の制服なら年25万円ほどの利益に過ぎません。それでも制服が割高と感じるのは、学校ごとの小規模単位で交渉している非効率さ、サービスレベルを強調し過ぎて過剰仕様になっていることが主な原因だろうと思います。できてしまった取引慣行にはまり込んでいるのです。

 まずは、交渉規模を拡大してほしい。教育委員会が音頭を取り、学校ごとではなく、市区町村単位で取引先を決めることで、規模によるメリットが期待できます。賛同する学校からまず取り組み始めればいいのです。デザインは別々のままでも、受注者を1社に集約するだけで効果はあります。上着とズボン・スカートなどの基本デザインも統一すると、さらに安くなりやすい。

 取引規模が大きくなればデザインと縫製とを別に発注することも考えられます。デザインコンペの優勝者から縫製仕様書を入手し謝礼を払い、謝礼の額を差し引いた価格を「予定価格」として示し、縫製業者に入札してもらいます。デザインできる業者は少数ですが、縫製だけなら多様な業者が参入できます。

 学生服のサイズは細かく、数十種類あるようです。私服のようにS・M・L・XL・特寸に絞り込んではいかがでしょうか。大半が公立中学に行く地域では注文時期を1、2月ではなく、年内に繰り上げる。それだけでも値下げにつながります。

 「夏冬一式を○万円以内で」などと価格に条件をつけ、交渉する手もあります。売り手にその価格内で取引できるよう工夫してもらうのです。

 取引先を決める際、関係者間の話し合いだけで決めるとデザインの良しあしだけに意識が集中しやすい。採点表を基に価格・品質・デザインなど各項目を点数化すると客観的、多角的に評価できます。

 様々な改善策を提案しましたが、どの改善策をどう組み合わせれば一番有効なのか、実は受注企業自身が知っているものです。ですから入札条件を決める前に、できるだけ多くの受注希望者の意見を聴き、最適な条件を組み立てるのが理想的です。また、制服デザイン変更や製造業者の契約更新に伴う新たな選考を積極的にネット上などで告知しましょう。多くの企業に周知できます。(聞き手・錦光山雅子)

「種類増やし多様性を」

 アンケートに寄せられた10代の提案を紹介します。

●「私服では生活状況などが一目でわかってしまう。ある程度画一化できる制服はやめるべきではない。ただ、スカート、ズボンなどを性別で分ける制度は要らない」(神奈川県)

●「もっと安く、もっとカジュアルな動きやすい服でいいと思います。種類も増やして『人それぞれ違う』多様性のある学校になってくれたらとてもうれしいです」(東京都)

●「なんでも学校指定っていうのはなんなんでしょう。もっと自由でもいいんじゃないのって思いますし、それ(服装や持ち物)が学校に持っていくにふさわしいかを考えるのも、社会に出るための勉強の一環だと思います」(長野県)

●「日本で1年とアメリカで2年高校に通っています。日本では夏に冷房が利きすぎて体が冷え、何度も保健室に通った覚えがあります。私が通っている米国の公立高校はボトムスの長さに少し制限があるだけ。好きなように服装を選べてとても快適です。制服を無くすべきだとは言いませんが、スカートとブラウスだけを指定し、その他は色の制限やバッジをつけるなどという規則だけで十分ではないでしょうか」(海外)

●「学校の制服以外にもなんちゃって制服のスカートやズボンをOKにすれば、女の子は喜ぶし、スカートが嫌な子だってうれしいと思います。小学生のときが私服通学で、毎日どんな服を着ていくか本当に悩みましたし、もしダサいって思われたり、それでいじめられたら怖いって思いました。だから、学校へ私服で行かなきゃいけなくなるのは絶対に嫌」(東京都)

制服の負担、見直すべき時期

 制服が必要か、不要か、アンケートの意見は割れました。必要だという人からも「高すぎる」という声が多く届きました。制服や学用品の負担を見直すべき時期に来ていると感じました。制服を続けるとして、学校だけに値下げ交渉を求めるのは難しい。今回の議論を経てそう思います。適正な競争環境を作るには、行政の力添えが必要です。その意味で、昨日のフォーラム面で紹介した福岡県春日市教委の入札制度や、制服デザインを統一した京都府福知山市の取り組みは参考になります。今後も制服価格の適正化に向けた知恵を探っていきます。(錦光山雅子)

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 ◆ほかに石原孝、菅野雄介、後藤泰良、二階堂友紀、村上研志が担当しました。

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