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 北海道足寄(あしょろ)町の旅館「オンネトー温泉 景福」で2014年10月、男性入浴客が浴槽内で倒れて重体に陥る事故があり、道警が業務上過失傷害の疑いで捜査している。事故直後の保健所の測定では、温泉に含まれる硫化水素ガス濃度が国の基準を大幅に超えていた。この施設では以前にも2人が同じ浴槽で倒れて死亡しており、道警はこの2件についても経緯を慎重に調べている。

 事態を重く見た環境省は今年9月に再発防止に向けた検討会を設置し、硫化水素を含む温泉の安全対策について基準を見直す方向で検討している。

 地元消防や男性の親族の話によると、重体となったのは東京都内の男性(52)。14年10月8日夜、浴槽内で意識を失っているのが見つかった。搬送先の病院で硫化水素ガス中毒の疑いによる脳機能障害と診断され、現在は意識不明で寝たきり状態となっている。

 事故のあった同じ浴室では重体となっている男性以外にも、13~14年に3人が救急搬送され、うち2人が亡くなっていた。搬送先の病院によると、13年に亡くなった64歳の男性は「溺死(できし)」、14年に亡くなった38歳の男性は心臓に血が行き渡らなくなる「虚血性心疾患」と診断されていた。

 病院側は今年9月、取材に対して「当時は硫化水素ガス中毒を疑わず、血液や尿の分析など詳しい検査をしなかった。同じ浴室からの搬送が相次いだことを考えると、今思えば中毒がきっかけという可能性は捨てきれない」と説明。病院は2人の診療記録を道警に提出し、道警が硫化水素との関係を慎重に調べている。

 死亡した男性2人は血液や尿が保存されていないため、硫化水素が死因と確定するのは困難だが、重体の男性は診断が可能だ。

 国の基準は、硫化水素を含む温泉はガスを抜いたり換気したりして浴室内の濃度が基準値を超えないように定めている。15年9月に浴室内の濃度を測定した研究機関によると、浴槽上は国の基準値の最大10倍、洗い場は最大20倍に達した。

 旅館は事故直後から自主休業し、現在は入浴できない。景福の経営者は朝日新聞の取材に「国の基準は理解していなかった。認識不足だった」と話している。

 硫化水素は火山性ガスの主成分の一つで、硫黄臭があり有毒。硫化水素を含む温泉の源泉は全国に440カ所以上ある。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(重政紀元、森本未紀)