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 「漱石国際エッセーコンテスト」の最優秀賞に選ばれたステファニー・エリカ・チャベスさん(27)は、カナダ・トロント出身。昨年8月、英語指導助手として来日し、愛媛県立松山中央高校を拠点に四つの高校で働いている。

 松山は漱石が英語教師として赴いた地であり、「坊っちゃん」の舞台だ。外国の青年を日本に招くJETプログラムに応募し、希望赴任地に「四国」と書いたら、意中の松山に決まったという。「運命だと思う。山に囲まれ、ハグされている気持ちになる」と愛着は深い。

 受賞作のエッセーは「私の人生を決定づけた人物は漱石であるといってもよい」と始まる。松山中央高校の同僚に手伝ってもらいながら、漱石との不思議な縁を日本語でつづった。

 高校時代、短詩を書くのに夢中になった。教師に勧められた英語版の百人一首が、日本文学との出会いだった。大学で英文学と創作を専攻し、アーサー王物語を題材にした「薤露行(かいろこう)」の著者として漱石を知る。ある日書店で偶然手にしたのが「草枕」の英訳だった。「主人公の画家は、なかなか絵を描けない。詩を書けない自分と共通するものがあり、読み終わった後に詩を書きたくなったんです」。年に一度は読み返してインスピレーションを得る人生の友になった。

 高校では生徒とともに競技かるた部に所属し、「あらざらむこの世のほかの思ひ出に……」と和泉式部の歌をそらんじる。昔から野球ファンで、休日には野球部の練習試合の応援に駆けつける。愛媛名物の鯛飯(たいめし)に舌鼓を打つ。

 漱石が現代的なのは、「環境や時代にうまく適応できない『部外者』意識や孤独感という、国や時代を問わず誰もが感じることを描いているから」とみる。日本文学の翻訳家になり、「薤露行」を英訳するのが目標だ。(吉川一樹)