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 ふだんは身近に感じにくい憲法。でも、私たちを守ってくれることがある。憲法改正をめぐる議論が動き始めるなか、3日で公布から70年となる。個人の権利を守りたいと考え、憲法に行き着いた人たちは、その価値をかみしめている。

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 【憲法13条】すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

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 2日朝、大阪市営地下鉄の運転士、河野英司さん(54)は自宅で、いつも通り口の周りのひげを短く整えた。20代で先輩に影響されて生やすようになり、ひげ姿での乗務は20年以上。「自分にはひげが合ってるし、あるのが当たり前」

 ところが橋下徹前市長時代の2012年、市交通局は乗客に好感を持ってもらう狙いで、職員の身だしなみ基準を作り、「ひげは伸ばさずきれいに剃(そ)ること」と規定。河野さんも上司から剃るよう指導されたが、手入れを怠ったこともなく納得できない。「ひげを生やす自由があるのでは」と従わなかった。その後、人事評価は2年連続で5段階の最低とされた。

 今年3月、「ひげを生やして勤務していることを理由に人事評価を下げられたのは憲法違反」として、ひげを認める職場環境や慰謝料を市に求める訴訟を大阪地裁に起こした。個人の尊重や幸福追求権を定めた13条に違反するとの主張だ。

 すぐに憲法が思い浮かんだわけではなかった。戦争放棄を定めた9条は知っていたが、「憲法を実感したことはないし考えたこともなかった」。そんな時、ネットであるブログにたどり着いた。ひげを生やす自由は13条で保障される――。その説明で、ひげと憲法がつながった。

 以前読んだ裁判の新聞記事も思い出した。ひげを理由に人事評価を下げられたとして会社に損害賠償を求めた会社員男性が勝訴したという内容だった。「自分も同じように判断してもらえるかも」。そう思い、弁護士に相談して提訴を決めた。

 市側は裁判で「公務員として客に不快感を抱かせないように、ひげを含めた身だしなみを整えるための合理的制約は許容される」と反論。ひげ以外にも評価を下げるべき理由があったとも主張している。

 河野さんは今も憲法を理解できたとは思わないが、「国民が幸せに暮らせるように守ってくれるもの」という印象を持っている。河野さんの代理人の村田浩治弁護士は今回の訴訟について「裁判で勝っても負けても、社会に問題提起することができる」と話す。ひげを生やすのを我慢している河野さんの同僚も、裁判の行方に注目しているという。

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